A 賃貸借契約の解除を
1 賃貸借契約の解除事由について
(1)信頼関係の破壊
一般的に賃貸借契約における借家人は借地借家法により保護されています。
このため、賃貸借契約を解除し、明渡しを求めることが出来るのは、「信頼関係の破壊」が認められる場合とされています。
(2)迷惑行為の立証
この信頼関係については、なかなか難しい問題です。まず、トラブルメーカーといった類の相談を受けることがありますが、一般的には「騒音」の問題、あるいは「ごみだしのルールを守らない」といったことが考えられます。ただし、裁判となった場合には、騒音がどの程度だったのか、どの程度の交渉や協議がなされたのか、といった点を立証しなければなりませんが、騒音を録音できているという例は限られているでしょうし、なかなか立証が難しいところです。
もし、騒音問題で悩まされているということであれば、是非、録音や交渉経緯を残していただくと役に立つと思われます。
(3)賃料の不払い
次に賃料の不払いです。賃料の不払いは客観的に立証が可能です。支払いが無いのであれば、まずは、それを理由に解除を検討するべきです。賃料の滞納は、家主にとって最大の信頼関係喪失理由です。
これまでの賃料滞納の状況等を整理する必要があります。賃料遅れの状況、額を考慮し、対応をすることになります。
ご相談の例ですと、まずは、賃料支払の催告をするということになります。催告とは、例えば「1週間以内に滞納金全額を支払え」「支払わない場合には契約解除する」といった通知です。相手方は滞納を解消できない場合には、「信頼関係を喪失した」として賃貸借契約の解除となるわけです。
(4)催告
催告の期間については、1週間程度が一般的かと思います。賃料を滞納していた人が1週間で支払えるとは思えないでしょうが、裁判で認められる催告の期間としては短すぎるということは無いと考えます。
もちろん、それよりも長い期間を催告期間とすることには何ら問題がありません。
2 解除通知の文例
催告の文例は以下のイメージです。もちろん、賃料を催告するだけで、解除まで記載をしない場合もあります。
<文例>
私は、相手方に対し、平成○月○日から、以下の約定で、貴殿に末尾記載の本件建物を賃貸しております。
(賃貸借の条件)
月額賃料 5万円(指定口座への送金)
支払日 前月末日限り
敷金 10万円
解除 賃料の未払いに対し、甲が催告したにもかかわらず、乙が支払をしない場合
連帯保証人 丙
貴殿は以上の約定にもかかわらず、本書面発送時点において、5ヶ月分の賃料である金25万円を滞納しています。つきましては、本書面受領後2週間以内に、指定口座に送金する方法によりお支払下さい。仮に、支払が無い場合には、本書面到達後2週間の経過をもって本件賃貸借契約を解除致しますので、その旨、ご通知致します。
3 次回は
解除通知到達後の手続きについて、ご案内致します。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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