弁護士の視点で

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年8月号》
賃貸借契約におけるトラブル5 被告が訴状を受け取らない
  質 問

【質問内容】
 アパートの大家をしています。入居者Aは賃料も何度か遅れ、現在は5ヶ月分の賃料支払いが遅れた状況です。賃料を支払うように内容証明郵便を送付しましたが、結果的に賃料の支払いをするでもなく、連絡すらありません。訴訟によることにし、提訴しましたが、裁判所から「被告が訴状を受け取らない」という連絡がありました。 どうすればよいのでしょうか?

  回 答

A とにかく訴状を送達させなければ始まらない
 訴状が被告に届かなければ、裁判はスタートしません。通常は、訴状は裁判所から「特別送達」という郵便で被告に郵送され、被告が受領することになります。ところが、被告の中には、訴状が届かなければ裁判が始まらないことを悪用し、訴状を受け取らない方もいます。
(1)休日に送達してみる
 おそらく送達先に被告がいるであろう場合には、休日に送達するよう手配をする休日送達の制度があります。
 なお、私は経験がありませんが、執行官が夜間に持参するという執行官送達の方法もあります。この場合には、執行官の出張費用を要することになります。
(2)送達先を変更する
 調査をしてみると、どうも住んでいない、というような場合には、送達先を変更して再度送達をすることが考えられます。一般的な送達先として、被告の就業先が分かっている場合には、就業先に送達することが考えられます。あるいは、実家に確実に生活をしているというような場合には、実家への送達も考えられます。また、法人の代表者については、自宅に送達することも考えられます。
(3)書留郵便による送達(付郵便による送達)
 住んでいるけど、裁判所からの書類を受け取らないことが明らかな場合、裁判所からの書留郵便の発送をもって、送達とみなす制度があります。この場合、仮に相手方が受け取らなくとも、発送の時点で送達がなされたことになります。
(4)公示送達
 調査をするが、どこにいるか手がかりが無いという場合には、公示送達の方法によります。この調査ですが、少なくとも住民票住所地、そこに同人が居住していないこと、知りうる就業場所など、調査をしたが所在が判明しなかったこと、といった事情が必要です。現地で電気メーターのチェックをするなど、調査が必要です。
 この調査をまとめた報告書を裁判所に提出することで、公示送達が可能となります。

 こうして、ようやく送達が完了し、訴訟がスタートすることが出来るのです。

 次回は、明渡し訴訟について説明したいと思います。

                                 以上

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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