A 強制執行の前に
(1)再度の交渉と調査
明渡しを求める判決を得た後には、再度入居者への連絡を試みます。改めて任意で明け渡しを求めることができないか、催促をします。
これは、その後の強制執行に多大な手間と相当な費用を要することから、少しでも任意での明渡しを求めることに意味があるからです。また、その後の強制執行手続を考えると、入居、建物の使用状況を把握しておくことには大きな意味があります。
私が訪問する場合には、ドアをノックし、本人と接触を試みることはもちろんですが、不在であったとしても、郵便受けや新聞用のドアポストに判決文を入れるなどし、連絡先を記載し、強制執行の予告という文書を同封します。
あわせて、不在なのか、その様子を確認するために、電気、水道、ガスといったメーターを記録します。
(2)不在と思われる
メーターが全く動いていないのであれば、すでに誰も生活していない可能性が高くなります。通常、冷蔵庫等を使用していれば、少しでも電気メーターは動き続けます。
また、その場で生活をしているのであれば、数日後に再訪問をすれば、水道メーターが動いているはずです。
あるいは、再度訪問する際には、夜間に訪問をすれば、電気がついているかということで在室状況の検討がつきます。
なお、事情がよくわからないので、立ち入りをしたいということも理解できますが、単独で立ち入り調査をするとトラブルになる可能性がありますので、立会いを求めるようにしてください。入居者と連絡がとれないが、電気はついたままになっている、郵便受けはちらしであふれている、水道が動いていない、というような場合には、中で入居者が倒れているといった不安もあるので、警察署に連絡の上、警察官立会いで開錠の上、確認をすることになります。
その他、緊急連絡先や連帯保証人に対しても連絡を重ね、立ち入り調査が必要であることの理解をいただき、可能であれば立ち会っていただくことになります。
室内を調査して、不在でも荷物がある、という場合には、強制執行の手続が必要となります。
(3)入居者がいる
明らかに入居者がおり、任意での立ち退きに一切応じない場合には、速やかに明渡し訴訟を遂行するしかありません。
なお、入居者(契約者)ではない、全く知らない方が住んでいるということであれば、契約者との関係を十分に聞き取る必要があります。
(4)強制執行の申立て
建物明渡の強制執行は、執行官に対し判決文、確定証明、執行文を準備の上、申立を行います。
申立書は書式がありますので、書式に従って、記載をすることになります(記載自体は難しくありません)。
これで、ようやく強制執行となるのです。次回は、この手続の続きを説明致します。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
|