A 明渡し執行
(1)明渡し執行の申立
強制執行の申立は、執行官に対する申立書の提出により行います。民事執行申立書の書式は裁判所のホームページでも掲載れていますので、参考にされてください。
執行に際しては、執行予納金が必要となります。予納金の金額は、物件の規模、距離等によって決まっていると思われますが、アパート等ですと10万円程度だと思われます。これは執行官の費用等に充当されることになります。
(2)執行官との打合せ
執行を申し立てた後に、執行官から日時の調整等の連絡が入ります。その際に、現住の確認、建物や動産の現状の確認、鍵の有無等を確認されます。
執行前に明渡しをしている債務者であればよいのですが、通常は中に何がどれだけ残されているのか、分からない場合が多いと思われます。そのような場合には、強制執行の際に荷物を搬出する業者も同行し、物量を確認する必要がありますので、物量が分からないのであれば、この業者も同行しなければなりません。
また、鍵を持っていない場合、債務者が鍵を替えているような場合には、開錠のために鍵屋さんも同行することになるので、その同行の要否も確認されることになります。このような調整を行って、執行の日時が決まることになります。
(3)執行官による占有認定
執行官とは約束の日時に現地で待ち合わせをすることが一般的だと思われます。執行官は、郵便受けの表示や郵便物等から、占有者を認定し、債務名義に記載の者との同一性を確認します。
仮に、占有者が異なるということになると判決による執行が出来なくなる可能性がありますので、重要な手続です。
アパートの大家さんとしては、債務者の郵便受けに溜まっている郵便物を勝手に捨ててしまいたいところかと思いますが、そのような郵便物が占有者の特定にとって重要だということになります。
こうして、占有者と債務名義の一致が確認されると、執行が始まります。
(4)執行官による明渡しの催告
執行官は、ドアをノックし、占有者に呼びかけます。占有者が出てくる場合には占有者に対し、明渡しの催告をします。明渡しの催告とは、占有者に明渡しの実行日を告知し、任意での明渡しを促すものです。具体的には、1ヵ月後に引渡し期限を設定するので、それまでに明け渡すように通告することになります。
この場合に、もし入居者が対応しない場合には、鍵を開けて室内に入ることになります。
また、鍵の準備が無い場合には、同行している鍵屋さんに開錠してもらうことになります。鍵屋さんの技術はすばらしく、あっさりと玄関の鍵を開けてしまうことがほとんどです。
鍵を開けた場合には、室内の状況、物量を確認し、室内に明渡し催告の書類を貼り付けることになります。
占有者も執行官による張り紙が室内にあると、相当に驚くはずですし、明渡しを任意にしてくれる可能性も相当にあると思われます。
ただ、この日は、ここまでの手続で、実際の荷物の搬出は行われないことになります。
動産の運び出しは、また次回ということになりますが、次号にて説明したいと思います。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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