A 明渡し執行
前回に引き続き、建物明渡しのフローを説明致します。一応、前回までに明渡し自体は完了していますが、その後の手続を説明します。
(1)搬出された動産
残された家財道具などは、「目的外動産」と言われます。この目的外動産は、債務者に引き渡すというのが建前ですが、このような明渡しの場面で債務者が残した荷物を引き取りに来るとは思えません。
結局、搬出された荷物は倉庫に置かれ、1か月の保管期間、保管されることになります。
価値があるものがあれば売却となりますが、経験上は廃棄となる例が多いです。なお、売却といっても誰も買わないでしょうから、その場合には大家さんが購入し、執行費用に充当されることになります。
こうして荷物もようやく全て処分されることになります。
問題は、この搬出や処分にかかる費用です。おそらくワンルームマンションでも20万円から30万円程度は要することが多いと思われます。
執行の当初から合計すると執行手続に要する費用はすぐに50万円程度になることも少なくありません。この費用には弁護士費用が含まれていませんので、弁護士費用を考慮すると、より高額な負担となります。
(2)ここまでに要する期間と損害
ここまでの解説で随分と時間と費用を要することが分かったと思います。改めて検討します。以下、スケジュールの目安です。日付はイメージですが、順調に推移して、提訴からでも半年を要することになります。大家さんとしては滞納がスタートして1年程度は賃料が入らないことがありえるのです。
賃料滞納が3ヶ月(1/1〜3/31)
明渡しの通知1か月(4/30)
提訴(5/15)となり、その後に第1回期日(6/30)
欠席判決(7/15)
判決確定(7/30)
強制執行申立(8/15)、調査
明渡しの催告・断行期日の指定(9/1)
明渡し執行(10/5)、動産の処分完了(11/10)
損害としては、賃料のほかに裁判費用、執行費用として総額50万円(裁判所に納付する費用のみ)、弁護士費用で50万円は要すると思われ、総額100万円の支出が予測されます。
賃料が5万円程度であったとしても、このような損害となるのですから、大家さんのリスクは極めて大きなものとなります。
次回、少しでも大家さんのリスクを軽減できないか検討したいと思います。
以上
回答者 弁護士 小川 剛
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