弁護士の視点で

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和2年10月号》
新型コロナウイルスの影響 従業員からの請求(ユニオン、労働組合からの要求)について4

 当社は、新型コロナウイルスによる事業への影響により、特定の社員を退職勧奨とし、2週間の休暇を与えたところ、その間にユニオンに加入したようで、ユニオンから団体交渉の申し入れがなされ、いよいよ団体交渉となります。
 どのように対応をすればいいのでしょうか。以下、団体交渉の日程が確定した後のフローを、質問形式で私の経験に基づき整理してみました。

Q 団体交渉に向けて、どのような準備が必要でしょうか?
A 前回、会場の準備まで説明をしたと思います。
  あとは、会社側の出席者、当日の団体交渉での回答の準備が必要になります。そのためには、議題をしっかりと把握すること、その説明、反論の準備を始める必要があります。
  例えば、整理解雇が問題となっているのであれば、整理解雇が有効であることを説明する必要があります。このためには、会社の現状をある程度説明することが必要です。また、人選の合理性、手続きについても説明を求められることになります。
  また、懲戒処分をしたのであれば、懲戒処分の根拠となる事実について説明をする必要があります。

Q 団体交渉にかけてきた電話では、ユニオンの方はとてもフレンドリーでした。団体交渉でも、普通に話せるのではないかと思いますが、実際はどうなのでしょうか。
A 労働組合は何らかの要求をしており、その実現を求めているだけであり、無意味な喧嘩をするようなことはあまりありません。むしろ、会社側が要求をそのまま認めるのであれば、良好な関係を築き上げようとしてくることが一般的です。
  一方、労働組合は会社が要求を受け入れないのであれば、会社の問題点等を次々に指摘することになり、会社は回答を用意していなければ、回答に窮する可能性があります。
  即答できない場合には、無理に回答をするのではなく、正確な回答を次回にする、と応じていただくのがよいです。

Q 労働組合の要求について、全て受け入れることにしました。そうであれば、会社は弁護士等に相談をする必要はないと思いますが、いかがでしょうか。
A それも会社の考え方です。
  ただ、労働組合からの要求事項は本当に全て応じてよいのか、ご確認ください。組合との合意について「人事権を行使する場合には、事前に組合の承認を要する」といった文書を組合と交わすことにならないようにご注意ください。
  また、労働組合からは社内規定である就業規則、賃金規程等の提出を求めてきます。これを提出されることも自由ですが、私は積極的に開示をしないスタンスです。

Q 団体交渉は録音するものでしょうか?
A 私の経験では、冒頭に「録音しますね」と確認して録音を開始する例がほとんどですが、そのような確認がなされない場合であっても、組合は録音をしています。会社側も録音をされるようにしてください。

Q 第一回の団体交渉では、組合から会社の説明の裏付けを求められる、あるいは即答できないという点もありました。そのほか、一回では話がまとまらない場合には、どうなるのでしょうか?
A 概ね1時間30分で終了することになりますので、最終的には次回の日程を決めて終了となります。

以上を整理します。
□団交の議題を確認し、回答の準備をする
□必要に応じて資料を準備する
□弁護士に依頼をするか検討をする
□録音の準備をする

 次回はもう少し団体交渉について、説明をしたいと思います。

                                                 以上
 本説明は本原稿掲載日(R2.9)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
                     前へ<<               >>次へ
弁護士の視点でリストに戻る