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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和2年11月号》
新型コロナウイルスの影響 従業員からの請求(ユニオン、労働組合からの要求)について5

 当社は、新型コロナウイルスによる事業への影響により、特定の社員を退職勧奨とし、2週間の休暇を与えたところ、その間にユニオンに加入したようで、ユニオンから団体交渉の申し入れがなされ、いよいよ団体交渉となります。
 どのように対応をすればいいのでしょうか。以下、団体交渉での対応について、質問形式で私の経験に基づき整理してみました。

 Q 新型コロナウイルスの影響について確認を求められました。どのような説明をする必要がありそうでしょうか?当社は赤字には至っていません。
 A 事業への影響が生じているとのことであれば、できるだけ具体的に説明をすべきですが、説明の程度は難しいところです。
  現在の収支が赤字でなければ退職勧奨ができないということはありません。今後の事業想定を見込んで、余剰人員が出る前に退職勧奨をしたという説明で問題ありません。

 Q 希望退職の募集をするのか、しないのであれば、退職勧奨は違法だと思わないのか、と言われました。違法だと思わないと回答しましたが、よかったでしょうか?
 A 整理解雇であれば、手続き要件が求められますが、退職勧奨は特に不相当な方法によらない限り、違法あるいは無効といわれることはありません。
  実際のところ、広く希望退職を募ると、会社が必要な人材こそ退職するなど、会社の想定と異なる結果となりますので、会社として退職勧奨を行うことは意味があります。

 Q 2週間の休暇の根拠は?賃金はどうなるのか?と聞かれました。「検討中」と答えたところ、組合の人から烈火のごとく文句を言われ、賃金を支払い続けると約束しましたが、よかったでしょうか?
 A 会社は休暇の根拠、賃金の扱いについて、事前に就業規則での確認をしておく必要があります。このケースでは、賃金を支払うとする例も多いと思いますので、結果的に賃金支払いをするとの回答は問題ではありませんが、当然に事前に決めておくべきことです。このようなことで団体交渉で会社の対応を非難されると交渉面でマイナスになりやすいので、ご注意ください。

 Q 入社以来のタイムカードと賃金台帳を求められました。出すべきでしょうか?
 A 労働組合は未払いの残業代がないか計算し、請求する根拠となる資料を求めているものです。相手のために何らメリットのない資料を出すことには躊躇がありますが、期間を区切るなどにより対応せざるを得ないと考えます。

 次回はもう少し団体交渉について、説明をしたいと思います。

                                                 以上
 本説明は本原稿掲載日(R2.10)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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