弁護士の視点で

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和2年12月号》
新型コロナウイルスの影響 従業員からの請求(ユニオン、労働組合からの要求)について6

  前回に引き続き、団体交渉における対応について、質問形式で私の経験に基づき整理してみました。
当社は、新型コロナウイルスによる事業への影響により、特定の社員を退職勧奨とし、2週間の休暇を与えたところ、その間にユニオンに加入したようで、ユニオンから団体交渉の申し入れがなされ、第2回団体交渉となりました。  

Q 組合からは、退職勧奨の迫り方は違法だという話が主張されました。違法ということはあるのでしょうか?どのように説明すればいいのでしょうか。
A 退職勧奨が違法となるのは、退職を強要するような場合、虚偽の情報(退職しなければ懲戒解雇だ)を告げるなどの場合です。
  退職を強要するとは、例えば、一人の従業員を5人で取り囲んで、辞めるというまで数時間も個室で面談を続ける、といったような場合が典型例です。
  そのような事実がなければ、会社は、退職勧奨に違法と言われるような経緯は無いと考えている。と回答すれば足ります。その上で、組合から具体的な問題点があると主張するのであれば、その証拠を求めることになります。

Q 前回の団体交渉で、退職勧奨の違法について説明をしていたところ、組合からは、「組合員の生活をどう考えている」「どう保障してくれるのか」と言われました。どう答えるべきでしょうか。
A 組合の質問の趣旨は、退職勧奨に応じるには、金銭面が必要だ、ということになります。
  ただし、退職勧奨は相手方に応じる義務もありませんし、会社側にも金銭補償をする義務はありません。
  話し合いをスムーズにするために、いくらかの金銭の支出を準備できるのか、検討をして回答をする必要があります。金額を回答できるのであれば回答しても構いませんが、「検討する」とすることも考えられます。

Q 退職勧奨で金銭を支払うことにしましたが、相場はあるのでしょうか?どのように回答をすべきでしょうか。
A 金額の問題は、退職勧奨の相手によっても異なりますし、明確な相場はありません。会社が支出可能な金額を提示すべきです。大企業で50代の職員を肩たたきする場合に年収の2年分といったことが言われることもありますが、それはそれぞれの会社によって考え方は異なって当然です。会社にとって、いくらであれば出したほうがいいのか、検討をする必要があります。
なお、提示額はシビアな交渉が予想されます。一度出した数字から交渉が入ることを想定するのか、一切交渉の余地のない数字を提示するのかは、場合によることになります。
また、このような回答、純粋な金額面の調整は組合員を外して事務折衝として、組合の代表者と会社の代表者だけで協議をすることも多いです。

  次回はもう少し団体交渉について、合意時の対応など、説明したいと思います。

                                                 以上
 本説明は本原稿掲載日(R2.11)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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