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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年1月号》
新型コロナウイルスの影響 従業員からの請求(ユニオン、労働組合からの要求)について7

 前回に引き続き、団体交渉における対応について、質問形式で私の経験に基づき整理してみました。
 当社は、新型コロナウイルスによる事業への影響により、特定の社員を退職勧奨とし、2週間の休暇を与えたところ、その間にユニオンに加入したようで、ユニオンから団体交渉の申し入れがなされ、第3回団体交渉となり、概ね合意できそうです。 

Q 組合と当該従業員について退職和解とするということになりました。退職理由はどのように決めるのでしょうか?
A 退職理由によって失業保険の給付の開始時期、期間等が異なるために労働組合は退職理由にこだわることが一般的です。
 退職してもらえるからといって、実態に即さない退職理由で合意するようなことは認められません。失業保険の不当な受給に加担することになりかねません。
 本件であれば、退職勧奨とするのが本来ですし、これは会社都合になります。
 なお、会社都合により退職となると、雇用に関する助成金を受領している場合、どうしても会社都合とできない場合があります。その場合には、例えば退職金を支給するので、自己都合退職としてもらうようなこともありえます。

Q 組合との合意で解決金を支払うことになりました。これは税金や社会保険はどうなるのでしょうか?
A 労使の問題を金銭で解決することはありえます。例えば、未払い残業代として金100万円を支払うとされているのであれば、それに見合う社会保険料等の扱いをすることになります。
 一方で、組合解決金という名目で組合に金銭を支払うことがあります。この場合には、本来、その趣旨(賃金なのか)ということを考慮するのでしょうが、おそらく社会保険料等は考慮されていないのが実際の運用です。

Q 組合が作成した合意書は何を注意すべきでしょうか?
A 会社と組合が合意をすると労働協約と理解されます。ある会社が合意した書面には、今後の人事異動については、事前に組合の承認を得ること、と記載があったそうです。このような会社を不必要に拘束する条項が紛れていないとも限りませんので、合意書の内容は慎重に確認するか、専門家にご相談ください。

                                                 以上
 本説明は本原稿掲載日(令和3年1月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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