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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年2月号》
M&Aについて デューデリジェンスの意味

 令和2年4月号から新型コロナウイルス対応ということで、賃貸借契約、労働問題について臨時的に記載してきましたが、早くも10か月を経過しました。記載を始めた当初はこのように長くなるとは想定をしていなかったのですが・・
 令和2年3月号までは、事業譲渡やM&Aについて記載してきました。令和2年3月号では、デューデリジェンスについて触れたところで、今後、具体的にデューデリジェンスについて説明をするはずでしたので、今号から改めてデューデリジェンスについて説明したいと思います。以下、デューデリジェンスについてはDDと記載します。

Q 会社を売る話を始めようとしましたが、何かと「デューデリ次第ですね」と言われます。そもそも、どういう面倒なようですが、何のためにするのでしょうか。デューデリとは何でしょうか?

A デューデリジェンスとは? (1)デューデリジェンスの意義  会社を売却する際には、何度もDDという言葉が出てきます。DDとは、M&Aにおいて買手企業が買収対象企業の実態を調査するものです。
 買手企業については、買う前に対象会社を調査し、失敗しないようにするものです。
 売手にとっては、説明どおりの会社であることを理解してもらう場となります。
 では、DDの結果、買手はどのような対応をすることになるのでしょうか?
 極端なことを言えば、買手はDDの結果、売り手企業や事業に法違反があることが判明した、反社会的勢力との関係が認められた、というような場合には、事業譲渡から撤退を判断することも十分にありえます。
 あるいは、取引価格への反映、一部株主の承諾が得られない場合の対応など、スキームの変更等を検討することになります。
 このように買手にとっては、極めて重要な手続きとなります。

(2)売手にとってのデューデリジェンスの意義
 売り手にとっては、DDは労力のわりにメリットが感じられない手続きです。
 まだ購入してくれるかどうかも分からない会社に対し、会社の詳細な情報、企業秘密を開示し、さらに、その資料では不足があるとして資料の開示を求められるのです。
 売り手としては情報を隠さないまでも、買手に全ての情報を提示し、一定の労力を提供しなければならないので負担は大きいです。
 そこで、売り手としては、秘密保持契約を締結することは必須です。また、売買が成立しない場合のDDの費用を負担しないようにすること、あるいは、一定の手付金を受領することを条件とすることもありえます。こうして売り手のリスクを減少することが考えられます。

(3)DDで問題がみつかっても基本合意の金額で売却できるか
 交渉次第です。ただ、基本合意はあくまでも基本合意です。DDの前に基本合意をしている場合であっても、基本合意の金額はDDで変更されると記載される旨が記載されている例が多いように、DDに応じて売買金額は変更されることが予定されています。このため、売主にとっては、DDで大問題が見つかっても当初の予定金額で売却したいと考えるでしょうが、基本合意だけを理由で交渉するのは、契約上は難しい例が多いでしょう。この意味で、基本合意自体は、売買契約そのものではないと考えられます。

 次回は、DDについて、より具体的に確認したいと思います。

                                                 以上
 本説明は本原稿掲載日(令和3年2月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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