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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年5月号》
M&Aについて デューデリジェンスの項目2

 前回は仲介契約の説明をしましたが、その前回(R3.3)に、デューデリジェンス(DD)を実施するということを説明しました。
 その中でも具体的には、法務DDではどのようなことをするのでしょうか。少し具体的に見てみたいと思います。なお、法務面のDDでも相当な時間を要する労務面のDDについては、次回以降の説明とさせていただきます。

1 会社の概要の調査
 まず、調査は相手方の商業登記簿を確認することから始まります。
 登記簿をチェックすると、会社の名称、会社の目的、設立、事業の目的、発行可能株式数、発行済株式数、取締役、株式の譲渡制限等について記載がなされています。
(1)株主の確認
 この連載でも株主の確認については述べてきたところですが、誰が株主であるか確認をすることは売主の特定において極めて重要です。
 株式会社であれば設立時に誰が何株を持っているのか、定款を確認すればわかります。
 その後の株式の発行数、引受人も定款、株主総会の議事録等で確認をすりことになります。
 設立時には、現在では連絡がとれないような方が発起人として出資していることがあります。会社がその株式は既に取得済と説明するのであれば、その客観的な資料を探すことになります。
(2)株式の確認
 株主の確認と重なりますが、発行しているのは普通株式だけであること、発行可能株式数に余裕がある場合にも、発行の予定がないことを確認します。
 また、株式に譲渡制限があれば、その譲渡制限をクリアできることを確認する必要があります。
(3)会社の概要に関する調査
 会社がどのような業務を行い、主たる取引先がどのようなところなのか、役員、従業員数、会社の営業拠点、収益を上げる構造について確認をする必要があります。極端なことをいえば、事業の実態があるのか、という点を確認する必要があります。
 また、取引先については親子関係にないのか、M&Aによって成果を得ることができる見込みがあるのか検討をする必要があります。
 財務面の問題は会計士等の専門家に委ねるとしても、決算書等は目を通す必要があります。
(4)契約関係に関する調査
 例えば、主たる仕入先との関係を重視し、M&Aを実施する場合、M&Aをきっかけにその契約が終了しては意味がありません。
 この面については、事実上、契約を維持してもらえるのか、という点。加えて、契約上、「承諾を要する」とされていないか、という点を確認する必要があります。
 これを「要承諾契約」といいます。次回は、この要承諾契約について説明をしたいとお思います。

                                                 以上
 本説明は本原稿掲載日(令和3年5月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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