今回は法務DDでも重要な点となる労務面のDDについて説明をさせていただきます。
労務面のDDでは、労務管理上の問題点の有無、想定しない債務がないか、場合によっては違法経営ではないか、という点を確認することになります。繰り返しになりますが、DDにおいて、極めて重要なポイントとなります。
労務DDの項目を数点指摘致します。
(1)就業規則・賃金規程等の整備状況
就業規則は対象会社と従業員の契約内容を定めるものです。その記載内容は、従業員の労務コストとなりますので、慎重にチェックする必要があります。
また、労務分野は毎年のように制度変更、重要な判例が出ており、最新情報にアップデートする必要があります。
もし、規程が実態にそぐわない、あるいは老朽化している場合には、正さなければなりません。
また、就業規則で「残業代は基本給に全て含まれる」というような法違反の可能性がある条項があれば、就業規則の改定を要することになります。
DDにおいて、M&Aまでに時間的な余裕がある場合には、対象会社で制度変更まで完了させることが考えられますが、時間的な余裕がない場合には、就業規則の整備コストを負担することを想定しなければなりません。
その他、手当て等が規程と実際の支給額に相違がある場合には、規程にあわせるのか、実支給額に規程を変更するのか、ということも検討が必要となります。
また、昇給のルールを確認する必要があります。定期昇給を約束している会社であれば、今後のコスト増の見込みについて把握する必要があります。
(2)退職金規程について
退職金制度は法律上の設置義務はありません。
しかしながら、退職金制度がある会社は多いところです。また、退職金制度がありながら、それに見合う積立を行っていない会社も珍しくありません。
その場合には、退職金の積立不足を債務として認識する必要があります。
(3)従業員との雇用契約について
本来、従業員との雇用契約は雇用契約書によってなされなければなりません。
しかし、小規模な事業者ほど、これが出来ていないことがあります。
従業員とどのような雇用契約を締結しているのか、就業規則とあわせ確認する必要があります。
(4)賃金台帳・タイムカードの確認
実際にどのような賃金の支払いがなされているのか、タイムカードはどのようになっているのか、確認をする必要があります。未払い賃金の請求を受ける可能性がないのか、請求を受けた場合には、どの程度の支払いを要するのか概算での試算をする必要があります。
労務面でのチェックについては、次回も引き続き検討をしたいと思います。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和3年6月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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