今回は前号に引き続き、法務DDでも重要な点となる労務面のDDについて説明をさせていただきます。
労務面のDDでは極めて重要なポイントとなります。
1 前回の確認
前回は(1)就業規則・賃金規程等の整備状況、(2)退職金規程、(3)雇用契約、(4)賃金台帳・タイムカードの確認について説明をしました。
就業規則、賃金規程が違法なものでないか、現行法に適用していなければ、修正を必要とします。その専門家費用も必要になります。退職金規程もあれば、退職金を積み立てなければなりません。それがなければ、追加の債務が生じます。また、雇用契約が実態と整合しているのか確認をします。賃金台帳、タイムカードの確認により、未払い残業の顕在化の可能性があります。これらをチェックする必要があります。未払い賃金があれば、その是正コストを計上する必要があります。
未払賃金については時効がありますし、従業員の請求によって顕在化することになります。そこで、未払い賃金リスクが2000万円あれば、それを(全額ではなくても)売買価格に反映する。もしくは後日の精算(未払い賃金の請求を1年間受けなければ、追加で1000万円を支払う等)を検討することがあります。
2 確認事項の続き
前号に続き、確認すべき点を網羅的にチェックしましょう。
(1)賃金制度、評価制度、昇給、賞与制度の確認
今後、会社を購入した場合、現状の賃金だけではなく、今後の賃金の在り方について確認をする必要があります。
賃金規程で細かく定まっている場合には、その通りに運用されているか確認すればいいのですが、人事評価は適当でありながら、それをさらに適当に賞与に反映としている例は少なくありません。どの程度の賞与水準なのか、会社の業績に応じて賞与を増減してきたのか、従業員によって賞与支給額を調整してきたのか、今後の昇給はどうなっているのか確認をする必要があります。
昇給については、何も規程はないが、新入社員から毎年10000円昇給しているという会社もあります。それで問題なければいいのですが、あらかじめ確認をしなければM&A後に昇給が違う、という問題になりかねません。
賞与も固定給となっていないか、変動をすることが可能なのか、確認をしなければなりません。
(2)労働組合の存在、36協定の有無
労働組合が社内に存在しているのか、チェックオフがどうなっているのか、36協定がどのように締結されるのか確認をする必要があります。
労働組合は社内の組合に限らず、社外の組合も存在しえます。過去の組合との協議内容、協定書等は確認をしなければなりません。また、組合との距離感等は、書面ではわかりにくく、代表者、担当者のインタビューが不可欠となります。
M&Aに関する従業員リリース、説明の方法にも関係するので、極めて重要な点となります。
労務面でのチェックについては、次回も引き続き検討をしたいと思います。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和3年7月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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