あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年9月号以降、サイト上でのサイト売買について紹介させていただきました。
前回は契約書の作成、交渉について説明を致しました。
今回は、契約の成立について少し解説を致します。
1 契約の成立と交渉段階の境目は?
サイト売買の売主と買主の間で契約交渉がまとまると、売買契約書を作成することになります。
売買契約書はラッコM&Aの場合には、電子契約で契約を成立させます。
一般的に契約の成立時点は、意思の合致とされています。法的には契約書は意思の合致を証明する書類であって、契約書が無くても契約は成立しうるので、契約書の完成時点と契約の成立時点は異なるとの解釈もありえます。
しかしながら、実際の当事者の意思も契約書の完成によって契約の成立と考えているでしょうし、やはり契約書の作成が予定されている契約では、契約の成立は契約書の完成時と考えられます。
電子契約であっても同様であり、双方が手続きを完了した時点と考えられます。
この手続きの完了までが交渉段階、契約手続きの完了後は契約成立段階となります。
2 売買契約の取りやめ、契約成立前後での扱いの違い
例えば、買主が資金不足のために売買を取りやめたい、という場合を検討します。
売買契約の成立前であれば、交渉段階に破談となったということになります。売主はここまで交渉して時間を無駄にした、あるいは他の人との交渉のチャンスを失ったとも考えられますが、損害賠償等もかなり限られたものになります。
法律上は、「契約締結上の過失」と言われる議論ですが、一般的には実費程度しか損害の請求をすることはできません。
一方で、契約を締結した後に、買主が「資金不足のために売買をやめたい」という話をしてきたとします。
この場合は、契約に定める売買契約の買主の義務である代金の支払い義務違反となり、「債務不履行」となります。
売主は買主に対し、売買代金を請求できるのが本来です。もっとも、売買代金を請求できますが、目的物は引渡しをしなければなりません。
売主としては、商品を引渡しても代金が入るか分からないわけですから、このような買主とは取引をしたくないのが実際だと思います。
とはいえ、契約もしているのに、買主が代金を支払わないといって、それで破談にして終わりというのは、あまりにも買主に都合が良すぎます。そこで、売買契約には、一方の契約破棄に関する違約金が定められていることが一般的です。
この場合の損害は、契約の実費というよりは、その契約で得られていた利益といったものも請求できると考えます。
また、損害賠償の額をあらかじめ定めることも考えられます。
この場合には、合意した額が賠償額となります。
このように、契約の成立の前後で大きく法的な意味合いが異なります。
買主としては、交渉段階なのか、契約後の違約金が生じる時期か、よく考えた行動が必要になります。
契約は守られるべきものです。皆様のご参考になれば幸いです。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和4年12月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
|