昨年9月号以降、サイト上でのサイト売買について紹介させていただきましたが、今回は特殊事例として、当事者と契約後に連絡が取れない事例について、ご紹介させていただきます。
1 売主との連絡がとれない事例
サイト売買において、対面していないことにも起因しているのだと思われますが、まれに当事者と連絡が取れないという場合があります。
契約成立前であれば、その時点で契約交渉を終了せざるをえません。
契約成立後に、そのような事態となった場合には、どうするべきでしょうか。契約の成立時に一般に買主は代金を納付しています。この代金の納付後、アカウントの引き渡し前に連絡がとれなくなるケースです。
この場合、ラッコM&Aでは、エスクロー期間の設定がなされているので、売主は契約解除の上、代金の返還を求めるというのが一般的です。もっとも、買主としては、どうしてもそのサイトが欲しい場合には、買主にアカウントの引き渡しを求めるということも可能ですが、あまり現実的ではないと思われます。
そのほかに、損害賠償等の可能性もありますが、連絡が取れない相手に対する手続きとしては費用対効果の点で疑問が生じるところです。
2 買主と連絡がとれない場合
大変まれなケースですが、売買契約を締結し、代金の納付がなされたところで買主と連絡が取れないという事態が生じた例があります。
お金を払って商品を取りに来ないというのは相当考えられない事例ではありますが、通常はお金をもらっておけばいいのでしょうが、商品たるアカウントの引継ぎが終わっていないので、代金はエスクローで留保されたままとなり、売主は困ってしまうことになります。
ここでの売主の考え方は2通りあります。一つは、契約解除を目指すということになります。一つは、代金を受領するという考えです。
基本は代金を先方がエスクローしている以上、合理的な期間が経過した場合には代金を受領し、売主はアカウントの引き渡し義務を負うということになります。
ただ、このような信頼関係が構築できない方に対し、代金を受領し、アカウントの引き渡し義務を負う関係を維持できない場合には、代金のエスクローはなされていても、現実の受領がないとして契約解除をすることが考えられます。
いずれにせよ、買主とはメールだけではなく、郵便等での連絡を尽くす必要はあると考えますが、なかなか厄介です。民法では受領遅滞と言われる分野ですが、エスクローが関連し、なかなか民法どおりの解決が妥当か悩ましいところです。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和5年5月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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