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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和5年7月号》
M&Aについて やっぱり契約解除したい事例のご紹介について

昨年9月号以降、サイト上でのサイト売買について紹介させていただきましたが、今回はサイトを購入したものの、やっぱり購入をやめたいという場合、どうなるのかという事例について検討したいと思います。

1 契約を解除したい
サイト上でのサイト売買については、エスクロー制度もありますし、明白な契約解除事由があれば、検収、エスクロー期間に当然に解除できることになります。
そうではなく、検収期間も終了したのちにエスクロー期間も経過し、その後に発覚した事情により解除したいというものです。
この場合には、売買契約に基づく引き渡しは終わっていますので、契約上は、契約の解除は予定されていません。
そこで、民法による解除できるような事情がないと契約の解除ができないというのが一般的です。

2 詐欺、錯誤
契約解除ではありませんが、詐欺、錯誤による場合には、契約の取消の可能性があります。契約の取消が認められたならば、解除と同じような効果が得られます。
詐欺は、真実と異なる説明をして騙すことです。典型的には故意に真実と異なる情報を告げることになります。
例えば、メインとなるコンテンツについて著作権の許諾を得ていないにもかかわらず、著作権の許諾を得ていると説明をして売買をし、検収期間経過後に著作権上の問題が生じたような場合となります。
これはサイト運営で重大な問題となりますし、著作権の許諾を得ていないことを知りながら、得ていると虚偽の説明をしているわけですから、詐欺といえそうです。
錯誤についても同様で、このような事例であれば、錯誤があったというべきでしょう。
一方、前提とした事実が違った場合、どのような内容についても詐欺、錯誤が認められるということではありません。わずかな違いであれば、錯誤とはなりません。
例えば、収益予測等は、予測値であり、それがずれたからといって詐欺、錯誤になるということは難しいと思います。
一般的には、詐欺や錯誤ということについて、どのような相違があったのか、それが売買における要素として、どの程度契約締結において重要なものであったのかといった点で契約の解除が認められるか判断されることになります。
当該予測値の相違が重要ではない程度であったり、そもそも、売買後のサイト運営に支障がない誤りの場合、そのデータが売買の動機において重要ではないという場合には解除とはなりにくいです。例えば、10年落ちの中古車が10万円で売られていて、買ったら11年落ちだった、という時に解除が認められるかというと、記載に誤りはありますが、10年が重要だったという事情がなければ、解除にはならないと思います。
逆に10年の特別のモデルだから価値があるということで相場より高い10万円で買っているということであれば、解除の方向へ価値判断はなされると思います。
サイト売買でも同様に考えていただくことになると思います。
いずれにせよ、このような相違がないように、売主、買主は誠意をもって情報開示をすることが重要です。

                                                 以上    

本説明は本原稿掲載日(令和5年6月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
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