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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和5年8月号》
M&Aについて 売り手にとって買い手はどこでもいいのか?

今回は、最近、当事務所でご相談があった事例について、少しご報告させていただきます。

1 売却先の検討について
先日、売却に関与した企業の担当者から連絡があり、M&A後の経営がうまくいっていないというご報告をいただきました。
売主サイドで関与した当方としては、かなり残念な報告です。
聞けば、買主は事業に理解がなく、その会社が持っていた不動産だけに関心がある態度であり、本業の赤字が拡大しているとのことです。そこで、旧経営陣に助けを求めたいということでした。
代表者はうまく会社を売却できたのですが、この旧経営陣に助けを求めるとは、資金提供に他なりません。
これでは、何のために売却したのかわかりません。
企業を購入する際のDDはかなり慎重に行います。一方で、企業を売却する際には、契約上不利な特約、表明保証はないかという点を重視しますが、買主がどのような人物なのかはトップ面談に任せてしまい、買主に資力があって、できるだけ高く購入する会社こそが買い手として望ましいと考えていました。
このような考え方は間違ってはいないと思いますし、買い手のチェックっポイントとして購入代金と支払い能力は最重要点です。
しかしながら、今回のご相談のように、あまりにも事業に理解がない、事業にはやる気がない、という態度だと問題です。
おそらく、従業員はこのようなトップだと仕事を続けられません。そうすると、ますます赤字になります。
しまいには、不動産を売却するということになるのです。
どうも聞いていると、最初から不動産だけを目当てにしており、本業は赤字前提で、倒産させるつもりだったのではないかとも思われます。
よく売却側の社長は、従業員の処遇は変更しないこと、ということを条件とする場合があります(この場合も概ね半年といった制限をすることがほとんどです)。今回の件もそのような合意はなされていました。
ところが、買い手の社長が、条件を変えないまでもやる気がないということになると、どうしようもありません。
このような問題は、トップ面談で解決をするしかないのかもしれません。あるいは、買い手の会社が現在どのような会社であり、従業員が何人ぐらいいるのか、どの程度の賃金を支給しているのかなど、調査をすればよかったのかもしれません。また、どういったシナジーが得られるのか、もっと検討をしておけばよかったかもしれません。
M&Aでの売り手側の失敗例として、大変勉強になる事例がございましたので、ご紹介させていただきました。

                                                 以上    

本説明は本原稿掲載日(令和5年7月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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