弁護士の視点で

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和6年2月号》
M&Aにともなう分社

社長には、お子様が二人おり(兄A、弟B)、第三者に事業を売却するのではなく、親族内で次世代に事業を承継させたいと考えています。
しかし、兄弟の関係はあまりよくないので、どのように事業を承継させるか悩んでいます。いくつかの事業があるので、私が亡くなった後には、任せる事業を区分けするのがよいとも考えています。また、一部の会社の不動産だけ二男に渡そうと考えています。どうしたらよいでしょうか。

1 会社の不動産を遺すということ
社長は相続のタイミングで事業承継にあわせて、会社の不動産の一部(例えば貸しビル)を1棟渡そうと考えているようです。
どのような方法があるでしょうか。
法人の財産は社長個人の財産ではないので、通常の遺言書のようにB不動産をBに相続させるという方法は難しいところです。そこで、兄Aが会社を取得し、代償としてBに法人から不動産を移転させるとすることは考えられます。
しかし、法人からBへの不動産の移転は贈与もしくは役員報酬となり、あまりスマートな方法とは考えにくいところです。
他にも社長の生前にB不動産を社長の個人名義にすることも考えられますが、会社から社長への財産移転での課税、さらにAへの相続での課税が生じることになります。
そこで考えられるのが、会社の分割となります。

2 会社の分割
現在の社長がA事業部門のためのA社、Bの不動産を管理するB社に分社し、それぞれについて100%の株主になる。そして、二つの会社の社長を続け、遺言書にA社の株式を長男に、B社の株を二男に、とすることが考えられます。
会社の分割については、会社の債権者の保護手続きが必要となります。特に銀行債務等がある場合には、どの会社にいくらの債務が残るのか、借り換えをしなければいけないのか等、事前の相談が必須となります。
会社法に手続きが定められ、計画の作成、株主総会、官報公告、債権者への通知を要するなど手続きの完了には半年以上の期間を要するのが一般的です。
時間を要する手続きとはなりますが、あらかじめ社長の意向が明確に示されるので、事業承継を円滑に行うことができますし、次世代もそれぞれの会社として無用な兄弟けんかを避けることができますので、望ましい方法だと考えます。
また、早期に着手することで事業承継税制の適用の可能性もありそうです。
できるだけ早く検討をすることがスムーズな承継の鍵だと考えます。気になる方はお早目にご相談ください。

                                                 以上    

本説明は本原稿掲載日(令和6年1月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
                     前へ<<               >>次へ
弁護士の視点でリストに戻る