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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和6年6月号》
カスタマーハラスメント対策入門3

カスタマーハラスメントとは?

1 カスタマーハラスメントの定義
 厚労省による「カスタマーハラスメント対策マニュアル」(以下、「マニュアル」)によれば、カスタマーハラスメントについては、次のように定義がなされています。
「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求をするための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」
 私見ですが、厚労省のマニュアルでは、従業員保護の視点から記載されているので、末尾が「労働者の就業環境が害されるもの」とされていますが、カスハラの定義としては、その部分は不要だと思います。例えば、法的に労働者とされる者がいないフリーランスなどでも、同様の問題は発生しますし、社長の就業環境についても問題となるわけです。さらに言えば、就業環境が悪化していなくても、カスハラに該当する行為はあると考えます。例えば、私は弁護士としてクレームを受けることはありますが、私に対する暴言などもあります。私は法的には労働者と位置付けられるのか微妙ですし、私の就労環境が害されているわけでもないわけですが、暴言内容によってはカスハラというべきだと思います。
 重要な点は、「クレーム、言動の要求の内容の妥当性」があるか、「当該要求をするための手段・態様が社会通念上の相当性」があるか、ということになりそうです。この2点のうちいずれかが欠けるようであれば、カスハラあるいは不当要求というべきです。
 さらに言えば、例えば、何ら要求もしないものの、単なる嫌がらせのような行為もカスハラに含めるべきだと思います。例えば、ネット、SNSでの誹謗中傷、会社への無言電話についても会社に対するクレーム、要求はありませんが、会社の業務を妨害するものであり、顧客との取引関係に基づくものであれば、カスハラというべきでしょう。
 こう考えると、カスハラとは、「カスタマーであるか」、「行為、要求の相当性があるか」という2点に集約されるようにも思われます。

 次回以降は、カスハラの具体例について、確認したいと思います。

                                                 以上    

本説明は本原稿掲載日(令和6年5月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
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