カスタマーハラスメント行為別 顧客への対応例
前回の続きとなります。厚労省のマニュアル26頁以下には、「ハラスメント行為別:顧客等への対応例」が示されています。
一般論であり、参考にならないかもしれませんが、紹介をさせていただきます。
5 威嚇・脅迫型
「殺されたいのか」といった脅迫的な発言をする、反社会的勢力とのつながりをほのめかす、異常に接近する等といった、従業員を怖がらせるような行為をとる。または、「対応しなければ株主総会で糾弾する」、「SNSにあげる、口コミで悪く評価する」等とブランドイメージを下げるような脅しをかける。
【対応例】複数名で対応し、警備員等と連携を取りながら対応者の安全確保を優先する。また、状況に応じて、弁護士への相談や警察への通報等を検討する。ブランドイメージを下げるような脅しをかける発言を受けた場合にも毅然と対応し、退去を求める。
今回の累計は、「威嚇・脅迫」となります。
事例で紹介されている内容も前段と後段では全く異なりますので、分けて検討をしたいと思います。
「殺されたいのか」といった発言は、完全な脅しです。直ちに警察に通報するしかありません。それが身の安全にもつながりますし、問題の解決にもつながります。
反社とのつながりを示唆するものとして、私が最近受けた相談では「上の者とつながっとるけん、お前なんか一発ぞ、どんななっても知らんぞ」と言われた例がありました。録音がなかったのが残念ですが、録音があれば、警察相談も可能な内容でした。
一方で、近時の問題は、「SNSにあげる、口コミで悪く評価する」というカスハラです。
最近もこのような相談を受けました。
会社に落ち度のないクレーム(消費者の購入まちがい)について、その返金を求めるクレームについて、会社には応じる義務がないにもかかわらず、当初は丁寧な物言いでしたが、会社が応じないとわかるや「SNSを通じて同様の経験をされた方々とも情報を共有し、貴社の対応について広く周知していく考えです。」といった通知をされるに至りました。
会社にとって厄介なのは、全体が正しく伝われば、クレーマーの問題と理解されるでしょうが、一部のメッセージのみ切り取りをされ、会社のメッセージが誤って拡散されることが問題となります。このような不当な要求は会社に不利益を告知し、法的妥当性のない解決を求めるもので脅迫というべきです。
この問題では、あえて郵送で回答書を送付することにし、上記のクレームがいかに問題であるかを記載しました。
会社にとっては、口コミは重要な問題です。この手の問題は対応が非常に難しいです。ケースバイケースでの対応となりますので、このような脅しをうけているのであれば、速やかに弁護士にご相談ください。
次回は次の類型について、また検討をしたいと思います。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和7年3月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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