カスタマーハラスメント行為別 顧客への対応例
前回の続きとなります。厚労省のマニュアル26頁以下には、「ハラスメント行為別:顧客等への対応例」が示されています。
一般論であり、参考にならないかもしれませんが、紹介をさせていただきます。
7 店舗外拘束型
クレームの詳細が分からない状態で、職場外である顧客等の自宅や特定の喫茶店等に呼びつける。
【対応例】基本的には単独での対応は行わず、クレームの詳細を確認した上で、対応を検討する。対応の検討のために、事前に返金等に対する一定の金額基準、時間、距離、購入からの期間などの制限などについて基準を設けておく。店外で対応する場合は、公共性の高い場所を指定する。納得されず従業員を返さないという事態になった場合には、弁護士への相談や警察への通報等を検討する。
今回の類型は「店舗外拘束型」となります。
おそらく想定しているのは、全く知らないところに行くのではなく、当方に落ち度があり、謝罪に行かざるを得ないが、どのような要求をされるかわからない、という場面だと思われます。一筆書かないと帰れない、怖かったがために、想定外の一筆を書かされるといったことを懸念して、それに備えての対応です。
基本的には、単独ではなく複数で訪問する、録音をするということが重要です。また、一定の時間で戻らない場合には、警察に通報することも考えられます。
なお、暴力的ではない場合には、一度持ち帰るとするのが理想的です。数日後に当方から回答をするとして、検討させてもらうということが望ましいです。検討するに際しては、恐怖を感じているのであれば、弁護士対応とするのが望ましいと考えます。
さらに、恐怖のあまり、想定していない一筆を書いてしまった場合には(例えば、法外に1000万円支払いますといった文書に署名)、脅迫による意思表示として、取消の通知を送付することになります。この時に録音があると、なぜ恐怖を感じたのか明らかになるので、録音があることは大きな武器になります。また、証拠があれば、「脅迫罪、強要罪、監禁罪」等として、刑事事件としての被害申告をすることも考えられます。
このように録音があるということは極めて重要です。また、資料記載のとおり、どの水準であれば要求に応じられるのか検討しておくことも重要です。もっとも、要求が想定水準内であっても、何か気付かない条件が付されている可能性もありますので、可能な限り持ち帰り検討としたいところです。困った場合には、速やかに、事前に弁護士にご相談ください。
次回は次の類型について、検討をしたいと思います。
以上
本説明は本原稿掲載日(令和7年5月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。
回答者 弁護士 小川 剛
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