弁護士の視点で

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和7年7月号》
カスタマーハラスメント対策入門16

カスタマーハラスメント行為別 顧客への対応例

 前回の続きとなります。厚労省のマニュアル26頁以下には、「ハラスメント行為別:顧客等への対応例」が示されています。
一般論であり、参考にならないかもしれませんが、紹介をさせていただきます。

8 SNS/インターネット上での誹謗中傷型
  インターネット上に名誉を棄損する、またはプライバシーを侵害する情報を掲載する。
 【対応例】掲示板やSNSでの被害については、掲載先のホームページ等の運営者(管理人)に削除を求める。投稿者に対して損害賠償等を請求したい場合は、必要に応じて弁護士に相談しつつ、発信者情報の開示を請求する。名誉棄損等について、投稿者の処罰を望む場合には弁護士や警察への相談を検討する。解決策や削除の求め方が分からない場合には、法務局や移送・有害情報相談センター、「誹謗中傷ホットライン」(セーファーインターネット協会)に相談する。

今回の類型は「SNS/インターネット上での誹謗中傷型」となります。
この問題が最も多く、かつ、解決が困難な類型と考えます。何が困難かというと、実際に投稿内容を削除できるのかが分からないという点にあります。
これは社会問題というべき状況であり、近時、総務省はニコニコ動画、爆サイと言われる掲示板サイトに対し、「有害情報の削除厳格化を義務付け」とされているところです。
逆に言えば、これまで、これらのサイトは削除が厳格になされていなかったということです。このため、弁護士に相談をしても解決できない事例が多数存在しています。
また、明らかな名誉棄損であれば削除となりますが、評価となると、表現の自由との関係で、削除が難しいのが実態です。例えば、「従業員の態度が悪かった」といった評価を書きこまれた場合、金銭要求をされるわけでもないのであれば、対応のしようがありません。
実際に私が所属する「小川・橘法律事務所」では、googleMAPの口コミ評価に、一つだけ「☆1」と最低評価をつけられています。この方は、名前も「YK」という方で誰かもわかりません。弁護士は、依頼者の味方であり、時に相手にとっては嫌な存在です。このため、相手方から一定数悪い評価となるのは止むを得ないと考えています。
なお、この「YK」は、他にも評価をつけており、その中で、私の依頼者の相手方だった保育園に「☆5」をつけていました。なるほど、相手方たるその保育園の関係者だろうと理解しました。これも削除を求めたいところですが、Googleは対応しないでしょう。
このように、一度書き込みを受け、その後もカスハラ対応が続くわけではありませんが、ずっと書き込みが残ることになります。
この件については、次回も続きを説明したいと思います。  

                                            以上

 本説明は本原稿掲載日(令和7年6月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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