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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和8年2月号》
カスタマーハラスメント対策入門23

カスタマーハラスメント対応 従業員への配慮

 この連載でも何度か説明をしましたが、従業員がカスタマーハラスメントの被害を受けた場合、従業員に配慮をする必要があります。従業員の現場での安全確保や精神面の配慮があります。

 ここで、カスタマーハラスメントと社内で発生するパワーハラスメントの違いについて確認したいと思います。
 両社が社内の問題、社外との問題ということは当然です。しかし、この違いは従業員への配慮において、極めて大きな差異が生じると考えます。
 まず、社内の従業員によるハラスメントの場合、それが発生しないように加害者となる可能性がある上司等に教育、研修を行うことができます。このため、社内でハラスメントが発生した場合には、直ちに加害者への教育が足りなかったという会社の責任問題の可能性が生じることになります。また、加害者には社内の懲戒処分等によって抑止することも可能です。あるいは降格といった対策も考えられるかもしれませんし、解雇をすることで、そのような人材を排除できる場合もありえます。
 一方で、社外に加害者がいるカスタマーハラスメントの場合、事前に教育や社内方針を伝えることはできません。また、警察を呼ぶということはできても、職場環境を害したとして懲戒処分や降格処分にすることはできません。
 さらに、残念ながら、クレーマー気質の方は社会に一定数、存在します。そうすると、未然防止の働きかけには限界があります。クレーマーの初期対応については、発生回避が不可能に近いのです。
 本件ではカスハラを前提としていますが、その際たるものは公務員であり、市民である以上対応をしなければならない、更に大変なのは、学校です。生徒や保護者との関係は卒業するまで「出入り禁止」ともできないのです。
 このため、カスハラ対応の場合には、会社に求められる安全配慮義務としては、未然に防止をすることではなく、対応した結果、ハラスメント被害者たる従業員へのケアといった点が問題にされるのが通常です。私見ですが、最初にハラスメント被害を受けたことについて、会社の安全配慮義務違反を認めることは、よほどの事情がある場合に限られるというべきです。
 もちろん、未然に予防するために、最近はカスハラに関する啓発するポスターが店舗等に掲出されるようになり、一定の予防になると思われます。
 ただ、例えば、ワンオペとなる職場はあるわけで、その場合に、カスハラが発生した場合に、直ちに会社の責任となるかというと大いに疑問です。
 そこで、従業員への配慮の措置を検討する場合にも、被害を受けた事後対応が中心になると考えます。  

 次回、は具体的な配慮について検討したいと思います。

                                            以上

 本説明は本原稿掲載日(令和8年1月)時点の情報により記載され、適切に更新されていない可能性がありますので、ご注意下さい。

回答者 弁護士 小川 剛
小川・橘法律事務所
810-0041福岡市中央区大名2-4-22新日本ビル8F
電話092-771-1200 FAX 092-771-1233
HP  http://t-o-law.com/
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