弁護士徒然草

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年3月号》
破産手続B 契約関係の処理

 1 売買契約の場合  破産となった場合,破産者からは貸したお金は事実上帰ってこないということは,(納得がいくかどうかはともかく)効果として理解いただけるものと思います。
 では,AさんがBさんに物を売却し引き渡したが,代金の支払いを受ける前にBさんが破産してしまったという場合,どうなるでしょうか?
 まずAさんはBさんから代金(全額の)支払いを受けることはできません。
 Bさんに配当可能財産がある場合に,債権額に応じた配当しか受けられないのです。
 この場合,BさんはAさん(あるいはAさんの管財人)に物を返せと言えるでしょうか。
 結論を言いますと,Bさんは,代金完済までは所有権をBさんに留保する,「所有権留保特約」を締結しておかないかぎり,物の返還を請求できません。

 では,売買契約締結後,代金支払も物の引き渡しもしないうちにBさんが倒産した場合は,契約関係はどうなるでしょうか?
 この場合,Bさんの管財人は,契約を解除するか履行するかを選択できます。
 解除すれば売主買主双方の債務はなくなります。
 他方,管財人が履行を選択した場合,売主は目的物を引き渡すことになり,Bさんの管財人は代金を支払うことになります。
 履行を選択した場合の代金債権は,「財団債権」となりますので,全額支払われることになります。

 2 賃貸借契約の場合
 (1)借主が破産した場合
  まず貸主は,賃借人が破産したからといって当然には賃貸借契約の解除はできません。賃貸人からの解除ができるのは賃借人に賃料未納などの解除原因がある場合に限られます。
  これに対して借主の管財人は賃貸借契約を継続するか解除するか選択できます。
 (2)賃貸人の破産
  かつては賃貸人の管財人が契約を継続するか解除するか選択権を有するとの見解もありましたが,賃借人にとって自分に関わりのないことで解除されるのは不都合であるとの批判があったため,この見解は否定され、賃借人が対抗要件(引き渡し)を備えていれば管財人は解除できないとされています。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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