弁護士徒然草

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年4月号》
破産手続 C 破産と相殺

1 相殺とは,二当事者間に債権が対立している場合に互いに消しあうことをいいます。
 ところで「相殺」は「そうさい」と読むのですが,たまに「そうさつ」と読まれる方がいて,指摘するべきなのか,読み方の指摘をすると気分を害されるかな?とか考えてしまって,本題よりもそっちが気になってしまうことってありますよね?
 閑話休題・・・,相殺の簡単な例としては,AさんがBさんに100万円の売掛金債権を持っており,BさんはAさんに100万円の貸金債権を持っている場合に,Aさんが相殺の意思表示をすることで,互いに債務をゼロにする場合が挙げられます。
 AさんBさんそれぞれが実際に100万円を準備してお互いに払い合うよりも相殺した方が簡単ですよね。そのため相殺は簡易な決済方法として機能しています。

2 破産の場面でも相殺の可否が大事です。
 上記の例でAさんが破産した場合,BさんはAさんから配当の限度でしか支払を受けられない(実際はほとんど支払われない)のに,Aさんには100万円払わないとなればBさんにとってたいへん不公平だからです。
 この場合,Bさんは相殺の意思表示をすることで100万円の支払を免れることができます。
 また民法上の原則では,Bさんは,Aさんに対する債権の弁済期(支払期限)が到来していないと相殺できないのですが,破産の場面では支払期限が到来していない債権も相殺できます。

3 ところで破産の場面では,支払を受けたのと同じ状態にしようとする債権者や,破産者(管財人)への支払をしたくない債務者が,相殺を利用できる状況をあえて作ろうとすることがあります。
 しかし破産では公平を害するような相殺は禁止されます。
 例えば,@すでにAさんに対する債権を持っているBさんが,Aさんの破産手続開始後,(あるいはAさんの支払不能後にそのことを知って)Aさんに対する債務を負担した場合,Bさんによる相殺は認められません。
 またAAさんに債務を負担しているBさんがAさんの破産手続開始後,(あるいはAさんの支払不能後にそのことを知って)Aさんに対する債権を取得した場合も,Bさんによる相殺は認められません。
 多数の関係者の利害が衝突する破産の場面では,公平を期するために,相殺についても制限が設けられているのです。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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