1 会社が倒産してしまった!賃金はもらえない?
勤務先が倒産してしまうと,労働者は勤務先の事業所からの賃金支払を受けられないことがほとんどです。
しかし労働者とその家族の生活を保護する必要性は非常に高いので,国が,勤務先である事業所に替って,未払賃金を立替えてくれる制度があります。
2 会社勤めじゃないとダメ?雇用主が労災保険料を納めてない場合は?
対象となる事業所は,労災保険が適用される,1年以上事業を継続していた事業所であり,個人・法人を問いません。
また事業所が労災保険に未加入,あるいは労災保険料を納めていなくとも対象となります。
3 パートでも立替払いは受けられますか?取締役はどうですか?
対象となる労働者は,正社員,パート,アルバイトなど雇用形態は問いません。なお「労働者」であることが必要なので経営者や取締役は含まれません。ただし形式上は役員でも,雇用主から指揮命令を受けていて,実質的に労働者と認められる人は,対象になります。
4 破産の場合だけ?
対象となる「倒産」は「法的倒産」すなわち破産,民事再生,会社更生,特別清算の場合の他,「事実上の倒産」を含みます。事実上の倒産の場合は労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。
5 賞与も払われますか?上限・下限はありますか?
立替払の対象となる未払賃金は,退職日の6か月前の日から立替払請求の日の前日までに支払期日が到来している,未払の「定期賃金」と「退職手当」です。解雇予告手当や賞与は対象となりません。
また,支払を受けられるのは未払賃金の8割です。8割とされているのは,通常,所得税の源泉徴収,住民税の特別徴収,社会保険料等の控除がなされているので,手取額を保障する趣旨です。
更に,立替払い額には退職時の年齢に応じて上限があり,30歳未満は88万円,30歳以上45歳未満は176万円,45歳以上は296万円とされています。
他方で下限もあり,未払額が2万円以下なら立替払制度は利用できません。
6 請求期限はあるの?
@法律上の倒産の場合は,破産手続の開始等の決定日翌日から2年以内に、A事実上の倒産の場合は労働基準監督署長が倒産の認定をした日の翌日から2年以内に,未払賃金の立替払請求書を労働者健康福祉機構に提出しなければなりません。この期間を過ぎた場合,立替払を受けることはできなくなります。
回答者 弁護士 仲家 淳彦
|