弁護士徒然草

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年10月号》
民法改正@

1 〜楚の国の人が船で川を下っているときに大事な剣を水中に落としてしまいました。
 彼は船のへりに目印をつけておき,到着後に水中に潜って剣を探しましたが見つかりませんでした。〜
 時代が変わっているのに法律が変わらないと法律は役に立たない,ひいては国をうまく治められないとうのがこの故事(船に刻みて剣を求める。)のいわんとするところです。
 もちろん,法が頻繁に変えられると安定性を阻害し,やはり国をうまく治めることはできません。
 法を変えるべきか維持するべきかは時代に合うかどうか,今のルールで不都合があるかどうかによって判断されることになるでしょうね。 

2 さてこのたび,民法について債権法に関する部分に大幅な改正がなされることになりました。
 これまでも民法は,敗戦に伴う親族・相続法の改正,後見制度の改正,表記の平易化などの改正が暫時行われてきましたが,債権法分野の内容の改正は民法制定(明治29年=1896年)以来のこととなります。なお改正法の施行は2020年6月2日までになされることになっています。
 今回の民法改正では,@時効制度,A約款,B法定利率,C保証制度,D瑕疵担保責任などについて改正あるいは新設がなされることになりました。
 本稿では,まず,このうちの@時効制度の改正についておはなしします。

3 現行法では消滅時効期間について権利行使可能な時から10年を原則としつつ,?医師らの診療報酬,建築工事代は3年間,?弁護士報酬,売掛金債権は2年間,?ホテル・旅館の宿泊料については1年間,など特定の債権についてはそれぞれ異なる短期消滅時効期間を設けていました。
 しかし例外的に短期消滅時効を定める合理性に疑問があることや,管理が困難となる不都合性が指摘されていたため,短期消滅時効は撤廃し,(@)権利行使できること知った時から5年間,あるいは(A)権利行使できる時から10年間に統一されることになりました。
 債権者にとっては時効期間が明確になったこと,特に短期消滅時効については期間が延びたことがメリットになります。
 他方で,売掛金債権(現行法なら2年間)については損金処理しにくくなるデメリットがあると指摘されています。

4 また生命身体を侵害した場合の損害賠償請求権の時効についても改正がなされます。
 現行法では,不法行為損害賠償請求権一般について,「損害及び加害者を知ってから3年」または「不法行為の時から20年」となっている一方,債務不履行賠償請求権の時効は10年となっています。
 そのため医療過誤事件や労災事故において,不法行為と構成すれば3年で時効が成立するのに,契約上の債務不履行と構成すれば時効は10年となるところ,実態は一緒なのに法的構成の違いで時効期間が異なることはバランスを欠くことが指摘されていました。
 この点改正法は(一般不法行為の3年,20年については変更はありません),生命身体侵害の損害賠償請求権について,?不法行為と構成する時は「損害及び加害者を知ってから5年」または「不法行為の時から20年」とし,?債務不履行と構成するときは「権利行使可能な時から5年」または「権利行使できるときから20年」とすることで,いずれの構成にたっても実質的に一緒となるように規定されることになりました。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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