弁護士徒然草

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成29年12月号》
民法改正B 保証

1 保証はトラブルのもと?
 「他人の保証人にはならない」と公言する人がいるくらい,保証は,契約それ自体がトラブルの元になることは多いと思われます。
 知人や友人に頼まれて断り切れずに保証人になったところ,主債務者が支払いできなくなり,保証人が多額の債務を負った場合,保証人は自分が借りた金でもないのに払わなくてはならず,経済的に破綻することがあるからです。
 これまでも,近いところでは平成16年に,@保証契約の成立に書面を必要とする(要式行為),A貸金・手形債務を主債務とする,個人を保証人とする保証契約では極度額を定めなければならない(包括根保証の禁止)等,保証規定の改正が行われてきましたが,このたびの民法改正でも保証人保護のための改正がなされました。

2 身元保証等の制限
 上記Aのように貸金・手形債務について,個人が保証人となる場合は極度額を定めることが要件とされていました。
 今回の改正では,貸金・手形債務にとどまらず,継続的契約関係から生じる不特定の債務について,個人が保証人となる場合は極度額を定めることが必要となりました。
 これにより,従業員の身元保証でも保証人が負担する保証債務の範囲が限定されることになります。
  雇用主としては身元保証契約を結ぶ場合は極度額の定めをおいた書面を作成すべきであり,適切な監督をすることで予防に重点をおくことになりそうです。

3 事業のための貸金債務についての特則
 事業用の借入の場合,債務額は多大となるのが通常ですので,保証人の保護の要請は特に強くなります。
 そこで主債務が事業のための貸金等債務であり,個人が保証人となる場合,保証人となるものが保証契約締結前1か月以内に作成した公正証書で保証の意思を表示することが必要となりました。
 これを上記@の保証の要式行為性を更にすすめて,保証人となるものに保証の効果を理解させ,債務負担の意思を確認させるためのものです。
 なお,個人が保証人となる場合でも,主債務者が法人である場合の取締役や主債務者と共同経営する者について(いわゆる経営者保証)については公正証書の作成は要件ではありません。

 また,事業債務の保証を委託する主債務者は,委託を受ける者(保証人となろうとする者)に,?財産状況,?主債務以外の債務の状況,?主債務のための他の担保,についての情報を提供しなくてはなりません。
 そして主債務者がこれらの情報を提供しなかったり(情報不提供),事実と異なる情報の提供(不実情報提供)をしたために,保証人が誤認して保証契約を締結した場合で,債権者が情報不提供・不実情報提供を知ったとき(あるいは知らなかったことについて過失があったとき)は,保証人は保証契約を取り消すことができます。
 ですから債権者が事業用債務について,個人と保証契約を結ぶ場合は,情報提供がなされたかをしっかり確認しておく必要があります。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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