弁護士徒然草

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年3月号》
18歳OK?

 友とするのによくない人?
 兼好法師は徒然草で友とするのによくないものとして7つのタイプ(@高貴な人,A若い人,B身体壮健な人,C酒飲み,Dつわもの,E嘘をつく人,F欲深い人)を挙げています。
 ここでなぜ若い人が挙げられるのか,兼好法師は理由を書いていないため,真意は不明です。
 一説によると,兼好法師などの老齢者と,若い人とは,お互いに理解ができないからだ,と言われています。

 成年年齢〜法律の分野における若い人とそうでない人の区別
 ところで法律の世界では,成人と若い人(未成年)は区別されています。
 区別する理由は,未成年者は判断能力や身体が未成熟なので成人と区別して取り扱うべきというものです。
 そしておよそ最近まで成人と未成年は20歳で区別されていました。
 しかし最近,諸法の改正により成人年齢は引き下げられようとしています。

 公選法上の投票年齢
 成人年齢引き下げの先駆けは,選挙権(投票権)年齢です。
 そもそもは憲法改正に備えた国民投票法において投票権年齢を18歳とすることになりました。
 そこで公選法も従前は20歳としていた投票権年齢を18歳としました。
 改正公選法はすでに施行されており,平成28年の選挙から18歳に投票権が与えられています。
 (なお被選挙権についての「参議院議員・知事は30歳以上,衆議院議員などは25歳以上」という規定はまだ変わっていません。)

 民法上の成人
 現行法は成人は20歳以上とし,未成年は親の同意がないと有効な法律行為をすることができないとされています(例外的に,20歳未満でも,婚姻可能年齢に達し(男性18歳,女性16歳)親権者の同意を得て婚姻すれば,成人に達したとみなされます)。
 しかしこれについても公選法とのバランスから18歳以上とする方向です。
 18歳になれば,自分だけの判断で有効に契約ができるとするのです。
 なお婚姻可能な年齢についても,男女で婚姻可能年齢に差を設けることへの疑問や,成年年齢を18歳とすることの関係上,男女とも婚姻可能年齢を18歳に引き上げ,かつ親権者の同意を不要とする方向になっています。

 酒とたばこ
 酒と煙草は,20歳を過ぎてからとなっています。規制の理由は未成熟者の身体の保護にあるとされています。
 これについては改正の予定はないようです。規制の理由が,未成年者の身体の保護にあるところ,身体保護の必要性は変わらないからというところでしょうか。

 少年法
 非行を犯した少年の処遇を定める少年法は,現行法では20歳未満と定めています。
 これについても適用年齢を18歳までにするべきという議論が上がっています。
 もっとも現行法でも18歳以上なら死刑や無期懲役を科すことはできます。
 また実際上未成熟な18歳〜20歳未満の人には少年法に基づく更生・教育の機会を与える必要性も指摘されています。
 そのため少年法適用年齢引き下げについては疑問が持たれています。

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 子供の心身が未成熟であることは明らかですから,ある一定の年齢で成人と未成年を区別することの必要性も明らかでしょう。
 しかし,これまでも20歳になったらとたんに分別がつくようになったわけでもあません。
 これは何歳で線引きしてもいっしょですね。
 40は不惑といいますが,40過ぎても迷ってばかりとみなさん,おっしゃってると思います。
 そのため18歳に下げることに明確な合理的理由はないと思います。
 何歳で線引きするのが妥当かについて,正解はないと言わざるを得ませんね。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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