裁判のニュースで
犯罪がらみの裁判のニュースで「○○裁判所は「有罪」の判決を言い渡しました。」とか,「△△被告は「実刑」の判決を受けました。」というアナウンスをよくききますよね?
ここで言う有罪判決と実刑判決の違いは御存知でしょうか?
簡単に言うと,有罪判決のうち,執行猶予がつかない,実際に刑務所に行かなくてはならない場合の判決を実刑判決といっています。
判決の種類
刑事裁判は,まず有罪判決か無罪判決に分けられます。
(厳密には,他にも時効であった場合の免訴判決や,被告人死亡の場合の公訴棄却判決など色々ありますが本稿では省きます。)
有罪となる場合に,刑の内容(懲役,禁固,罰金)や重さ(懲役○年,禁固△年,罰金□円)を決めます。
そのうえで,例え懲役1年6か月となっても,一定期間何事もなく過ごせたらその刑に服さなくてよくなるのが執行猶予の制度です。
詳しく言うと執行猶予は,3年以下の懲役・禁固の他,50万円以下の罰金の場合につけることができます(懲役とは刑務所で刑務作業につかされる刑であり,禁固とは刑務所に収容されるけれども刑務作業につかなくてよい刑です。)。
執行猶予期間は1年以上5年以下であり,猶予期間中に更に刑に処せられなければ(前の)刑の言い渡しは効力を失う結果,刑務所に行かなくて済みます。
逆に猶予期間中に別の犯罪について刑の言い渡しを受けると,執行猶予が取り消されます。
執行猶予というものは,以上のような制度でありまして,報道機関の言い回しでは通常,「有罪判決」という場合は「有罪だが執行猶予がつく場合」,「実刑」という場合は「有罪で執行猶予もつかない場合」を指しています。
一部執行猶予?
さて,執行猶予というのは以上のような制度ですが,最近,法改正がありまして,一部執行猶予という制度が設けられました。
普通の執行猶予は,「懲役1年6月,執行猶予3年」という形で,懲役1年6カ月分は(別罪で刑に処せられない限り)まるまる刑務所に行かなくて済むものです。
これに対して「一部執行猶予」は,「懲役1年6月」とし,「うち6月については3年間執行を猶予する」というもので,1年間は刑務所に行かなくてはならないが,残りの6カ月分については,とりあえずは刑務所に行かなくていいというものです。
一部執行猶予制度は,主に薬物事犯で,実刑にせざるを得ないが,全部について刑務所の刑に服させるのではなく,残りについては社会内で処遇させた方が適当であるという場合に用いられます。
特に薬物事犯では,一旦刑務所を出た後の,定期的な薬物検査も受けることが条件となることもあります。
なかなか薬物は本人の意思だけでやめられないこともあるので,更生の実を上げるために導入された制度と言えます。
制度はまだ始まったばかりですので,制度の有効性は今後検討されるでしょうけれども,本人の更生と再犯防止に役に立つ制度であってほしいと思います。
回答者 弁護士 仲家 淳彦
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