1 高齢等により判断能力の低下した人については,詐欺などの犯罪から財産を守ったり,施設への入所契約などをする必要があります。
このような場合に判断能力の低下した人を保護する制度が後見・保佐・補助の制度です。これらを「後見制度」と総称します。
後見制度では,判断能力の低下した人の保護の必要性と,自己決定権の尊重という観点から,判断能力のレベルに応じて,制限される行為・単独でできる行為の範囲が異なります。
2 後見
後見とは,判断能力を欠く常況にある人,すなわちまったく判断能力のない人を保護する制度です。
後見に付された人(被後見人)には,保護者として「後見人」がつきます。後見人は,被後見人の財産管理権のほか,財産上の行為についての代理権と取消権が与えられます。
被後見人は,判断能力がないのですから,単独で有効な法律行為ができず,単独で行った行為は取消うるものとなります。
もっとも日用品購入については被後見人の財産を害するおそれがさほどないし,その程度の自己決定権を尊重する必要がありますので,日用品購入は単独でなしえます。
(日用品購入については後で述べる保佐,補助の場合も単独で行えます。)
3 保佐
保佐は,判断能力が著しく不十分な人を保護する制度です。
保佐に付された人(被保佐人)の保護者を「保佐人」といいます。
被保佐人は,民法13条が定める重要な財産行為(民法13条)を単独では行えず,保佐人の同意が必要となります。
民法13条の定める重要な財産行為としては,借金,保証,不動産売買,貸付が挙げられます。介護施設への入所契約もこれらに含まれます。
また同意が必要な行為の範囲は,裁判所の審判により民法13条の対象行為よりも拡大することができます。
これら保佐人の同意が同意なく行えば取消の対象となります。
更に特定の行為については,「代理権」も付与できます(民法876条の4)。代理権が付与された場合は,保佐人が当該行為を代理できます。
なお保佐人は,当然には管理権を有しません。代理権を与えられた行為に関するもののみ管理権が認められます。
4 補助
補助は,判断能力が不十分な人を対象とする制度です。
補助の場合,特定の行為について,本人(被補助人)の同意を要件として,補助人に,代理権(民法876条の9)または同意権が付与されます。
ここで同意の対象となる行為は「保佐人の同意を要する行為」(民法13条)の一部に限られます(民法17条)。
5 後見制度の運用状況
高齢化社会を反映して,後見制度の利用は年々増加傾向にあり平成27年には約20万件が開始しています。
そのうち約8割が後見であり,保佐と補助はそれぞれ1割5分,5分という割合です。
判断能力の低下に応じて早期に保護を図る運用が必要だと思われます。
回答者 弁護士 仲家 淳彦
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