1 民法のうち,債権に関する規定が改正されましたが(平成32年(2020年)4月1日施行),相続法に関する規定も平成30年7月に改正がなされました。
このたびの相続法分野の改正は,昭和55年以来の大改正であり,遺言制度の見直し,配偶者居住権の保護,遺産分割制度の見直しがなされます。
2 遺言制度の見直しについて
(1)自筆証書遺言の方式緩和
遺言には,自分で作成する自筆証書遺言と,公証人が作成する公 正証書遺言がありますが,自筆証書遺言の場合,本文,財産目録,署名などすべてについて自筆によることが必要です。しかも加除訂正についても逐一記載して押印する必要がありますので,特に財産が多い場合は作成が面倒でした。
これに対して改正法では,財産目録については自書でなくてもよい,すなわちワープロ・パソコンで作成した書面でいいことになりました。
ワープロ・パソコンでいいのは財産目録だけであることと,財産目録の各頁に署名押印が必要なことにご注意ください。
なおこの規定の施行は,平成31年(2019年)1月13日からとなっています。
(2)遺言書保管制度の新設
相続をめぐる紛争(特に自筆証書遺言の保管に関するトラブル)を防止するという観点から,相続法改正に合わせて,遺言書保管法が制定され,法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度ができました。
保管申請の対象となるのは自筆証書遺言に係る遺言書のみです。
保管の申請は,遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局に対して行います。
保管申請がされた遺言書については法務局が原本を保管し,画像データも管理します。
申請者は,保菅申請の撤回も可能です。
このようにして保管された遺言書については, 遺言書の検認(民法第1004条第1項)の規定は,適用されません(第11条)。
すなわち現行法では,自筆証書遺言を見つけた人は,相続発生(遺言者死亡)後直ちに家庭裁判所で検認をしなくてはならないのですが,この保管制度を使えば,検認の必要がなくなります。
遺言書保管法の施行期日は,今後政令で定められることになりますが,公布の日から2年以内に施行されることとされており,施行前には,法務局に対して遺言書の保管を申請することはできません。
回答者 弁護士 仲家 淳彦
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