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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年10月号》
相続法改正A 特別寄与制度

1 改正前
 現行法すなわち改正前のルールでは,被相続人以外の人は,被相続人の介護をしても,被相続人の財産を取得することはできません。
Y(被相続人)
A(長女)
B(長男)=X(Bの妻)
 例えば,Bの妻であるXさんが,Bが亡くなった後に,Bのお父さんであるYの介護を行うなど,Yのためになる努力をしていても,Yが死亡した場合,XはYの相続人ではないため,Yの遺産を相続することはできません。
 これに対してYの長女Aは,相続人ですから,当然にYの遺産を相続できます。
 しかしこれでは,不公平感が強いですよね。

2 特別寄与制度の新設
 そこで改正法は,このような不公平感をなくすための特別寄与制度というものを新設しました。
 これは,相続人以外の被相続人の親族が,無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,一定の要件の下で,相続人に対して金銭(寄与料と呼びます。)を請求できるようにするというものです(1050条)。
 具体的には以下のような制度です。
 @対象者は,「相続人以外の,被相続人の親族」です。
 親族関係(民法725条)のない人は対象となりません。
 上記の例でXさんは,Yの亡くなった長男Bの配偶者ですので姻族として親族にあたります。
 A無償で療養看護その他の労務の提供を行い,被相続人の財産を維持,増加することが必要です。
 介護の対価をもらっていたら無償になりません。
 また]さんが介護等することで,Yさんの財産が減らずに済んだことが必要です。
 B上記要件を満たせば,特別寄与者である]さんはAに特別寄与料を請求できます。
 当事者間(A]間)で協議が整わない場合,]さんは家庭裁判所に協議に代わる処分を求めることができ,裁判所が寄与の程度などを考慮して特別寄与料の額を定めます。
 なお特別寄与者が家裁に処分を求めることが出来るのは,相続開始と相続人を知ってから6月以内,または相続開始から1年以内です。

 裁判所が特別寄与料の額をどの程度認めるかは,制度運用が開始されないと分からない面もありますが,少なくとも,特別寄与者の権利を認め,不公平感をなくすところに,この制度の意義があると思われます。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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