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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《平成30年11月号》
相続法改正B 配偶者の居住権

1 被相続人(亡くなった方)配偶者は相続権がありますが,居住権については特に保護する必要があります。そこで配偶者の居住権を保護する制度が新設されました。
 この制度には,@「遺産分割が終了するまでの間」といった比較的短期間に限りこれを保護する制度(配偶者短期居住権)とA配偶者がある程度長期間その居住建物を使用することができるようにするための制度(配偶者居住権)があります。

2 @配偶者短期居住権について
(1)居住権を保護する必要性は,以前から認められており,平成8年12月17日の最高裁判例が,被相続人(亡くなった方)の配偶者が被相続人所有の不動産に居住している場合については,「原則として被相続人と配偶者の間で,使用貸借契約が成立していたと推認する」としていました。

(2)しかしながらこの法理では,居住建物が第三者に遺贈された場合や,被相続人が反対の意思を表示していた場合には,使用貸借が推認されないため,配偶者居住権の保護は不完全でした。

(3)そこでまず,居住建物を,(配偶者を含む)共同相続人間で遺産分割する場合,配偶者が相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた時には,?遺産分割によりその建物の帰属が確定するまでの間又は?相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間,配偶者は引き続き無償でその建物を使用することができることとなります。

(4)また,上記以外の場合,すなわち遺贈などにより配偶者以外の第三者が居住建物の所有権を取得した場合や,配偶者が相続放棄をした場合には,居住建物の所有権を取得した者は,いつでも配偶者に対し配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができるが,配偶者はその申入れを受けた日から6か月を経過するまでの間,引き続き無償でその建物を使用することができることになりました。

3 A配偶者居住権について
(1)現行法では,配偶者が居住建物を取得する場合,他の財産を受け取れなくなる可能性があります。
 例えば,遺産が,自宅(2000万円)と預貯金(3000万円)で,相続人が子供1人と配偶者の場合,相続分は1:1(2500万円ずつ)ですから,配偶者が自宅(2000万円分)を取得すると預貯金のうち2500万円は子供が取得しますので,配偶者は後は預貯金のうち500万円しか取得できず,今後の生活に不安が生じます。
 そこで遺産分割又は遺言により,自宅(2000万円)については,配偶者は1000万円の居住権を取得,子供は1000万円に負担付所有権を取得するものとし,預貯金3000万円は1500万円ずつ分割することができる制度を設けました。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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