1 相続の対象
ある人が亡くなりますと,亡くなった方の財産は「遺産」として,
特段の理由がない限り,相続人に引き継がれます。
このことは民法の896条に規定されていて,これが相続の基本です。
その結果,家や預金などの財産については,相続人全員に権利があることを前提に,具体的に誰がどんな財産を引き継ぐかは遺産分割協議で決められることになります。
2 祭祀財産の特殊性
これに対して,仏壇やお墓について(これを祭祀財産といいます。また遺骨についてもこれに含まれるというのが一般の見解です。)は,法律は別の考え方をもっており,亡くなった方(被相続人)の指定または慣習によって定めるとし(民法897条),通常の遺産のように,相続人全員に権利があることを前提とはしていません。
しかしながら亡くなった方が指定しなかったり,慣習も定かではないということもあり,そのような場合に誰が引き継ぐかについて紛争になることもあります。
3 祭祀財産の帰属に関する判断
相続人がそれぞれ,自分が仏壇やお墓,遺骨を承継すると言って紛争になる場合,すなわち祭祀財産の帰属について紛争になる場合には,通常の遺産分割と同様に,家庭裁判所の調停または審判によって定めることになります。
通常の財産については,究極的に金銭に評価できるものですから,基本的には相続分に応じて分割がなされます。
これに対して祭祀財産の場合は,亡くなった方の意向や,誰が祭祀財産を承継するのが適切であるかという観点から承継者が決められます。
最近の裁判例(審判例)では,姉妹2人の双方が承継を主張する事案で,お墓が近所にあり,亡くなった方の隣に住んでいて療養看護をしていた方に祭祀財産の承継を認めました(名古屋高裁平成26年6月26日)。
4 葬儀費用について
相続の場面で結構もめるのが,「葬儀費用は誰が負担するのか」という問題です。
これについては法律に規定がなく,?喪主負担説,?相続財産負担説,?共同相続人負担説など,いくつも見解があるため,われわれも頭を悩ませています。
回答者 弁護士 仲家 淳彦
|