弁護士徒然草

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和元年7月号》
「パワハラ防止法」

1 今年の5月29日に、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正という形でいわゆる「パワハラ防止法」が成立しました。

2 本改正では、「パワハラ」について、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」という定義が設けられました(30条の2第1項)。
パワハラの要件として、まず「優越的な関係」が挙げられます。
ここでは、パワハラは、上司から部下に対するものに限られません。
部下でも発言力が強かったり、同等の地位でも集団になったりすることで、職場内での優位性が認められ、パワハラに該当することがあります。
次に要件として、「業務上必要かつ相当な範囲」を超える言動であることが挙げられます。業務上必要な指示や注意・指導はあたりません。

3 厚労省はパワハラの例として、
@暴行・傷害といった「身体的な攻撃」
A脅迫・名誉毀損・侮辱・暴言といった「精神的な攻撃」
B隔離・仲間外し・無視といった「人間関係からの切り離し」
C業務上不要あるいは遂行不可能な仕事の押し付けといった「過大な要求」
D業務上の合理性のない、能力・経験にかけ離れた程度の低い仕事を与えたり、仕事そのものを与えなかったりといった「過小な要求」、
E私的領域に過度に立ち入る「個の侵害」
を挙げています。

4 今回の法改正で企業に課せられた義務はパワハラにより就業環境が害されないように、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な措置を講ずることです。
具体的には以下のような措置を取ることが求められる見通しです。
(1)パワハラ防止方針の明確化・労働者への周知
 ・事業主による方針明示
 ・就業規則で対象行為と処分を明確化
(2)相談・苦情対応体制の整備
 ・相談窓口の設置
 ・窓口設置の周知
(3)パワハラへの迅速かつ適切な対応
・事実確認
・「被害者」への配慮措置の実施
・行為者への措置(懲戒処分など)
・再発防止措置の策定・実施

5 大企業については、2020年4月から、中小企業は2年後の2022年4月から、上記の防止措置をとる必要があります。
罰則こそありませんが、勧告されたのに従わない場合には社名公表の措置が取られることが検討されています。
パワハラにより就労環境が害されるのを防ぐためにも、防止措置をとることが重要です。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
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