弁護士徒然草

                     前へ<<               >>次へ
福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和元年10月号》
休眠抵当権の抹消

 不動産を売却して処分するために登記を確認したところ、古い抵当権が残っていることがあります。

   実際はすでに弁済しているのに登記が抹消されていなかったり、時効にかかっていたりする場合が多いので、抵当権を実行される可能性は非常に低いと思われます。
 しかし、抵当権登記が残ったままだと買受希望者さんは嫌がるので、売却に先立ち抵当権登記を抹消する必要があります。

   抵当権登記の抹消は、抹消登記権利者(不動産の所有者)と抹消登記義務者(抵当権者)が共同申請して行うのが原則です。
 そこでまず、抹消申請の協力のために、抹消登記義務者である抵当権者を探す必要があります。
 登記には登記時点の抵当権者の住所が載っていますから、住民票をたどって抵当権者の住所を探してコンタクトを取るのです。
 抵当権者が亡くなっている場合は戸籍を入手して抵当権者の相続人を探します。
 ところが抵当権があまりに古い場合、住民票は戸籍も処分されていて、抵当権者や相続人を探すことができないこともあります。

   この場合まず、「不在者財産管理人」を選任する方法が考えられます。家庭裁判所に申し立てて不在者財産管理人を選任してもらい、不在者財産管理人宛に登記抹消請求の訴訟を起こすのです。抹消の理由としては債権の時効消滅などを挙げます。
 もっとも不在者財産管理人の選任にはお金がかかります。申立費用は800円ですが、管理人に仕事(財産目録の作成、裁判への応訴)をしてもらうために10万円〜30万円程度かかるのです。
 そこで活用したいのが供託です。不動産登記法70条は登記義務者の所在が不明の場合の登記抹消方法を定めていますが、同条の3項で、被担保債権の弁済期から20年経過後に、被担保債権額・利息・遅延損害金を供託すれば抵当権者が単独で抵当権登記を抹消できることしています。
 休眠抵当権の債権額が低額で、利息を附してもさほど多額にならず、不在者財産管理人費用よりも安く済みそうなときは、供託による方法がいいですね。

回答者 弁護士 仲家 淳彦
あゆみ法律事務所
弁護士 仲家 淳彦
830-0023福岡県久留米市中央町37-20 久留米中央町ビル5階
電話0942-65-9277 FAX 0942-65-9280
                     前へ<<               >>次へ
弁護士徒然草リストに戻る