大昔に不動産を購入したのに名義変更をしていなかったので名義変更をしたいという方がたまにいます。
不動産の名義変更をすることを,所有権移転登記手続といいますが,この手続の方法としてはまず,改めて名義人又はその相続人との間で契約を交わす方法が考えられます。
移転登記手続のために必要な書類に署名と実印の押印,印鑑証明書をもらい,法務局に提出するのです。
しかし,契約を結ぶのも一苦労ということは多々あります。
そこで,名義人からの判子をもらうのが難しい場合に,行うのが訴訟による移転登記です。
名義人との間で契約書があれば,「売買契約に基づく移転登記」を請求します。
しかしあまりに昔のことで契約があったかどうかも分からない場合は,「時効取得に基づく移転登記」を求めます。
時効取得は,対象物を自分のものとして占有を開始して,一定期間占有を続けていた場合に,ものの所有権を取得できる制度です。
「自分のものとして」占有することが必要ですから,長年「借りている」だけの場合は時効取得は認められません。
また「平穏」かつ「公然」に占有することが必要ですので,乱暴に奪い取った場合や,こっそり開始した場合も時効取得は認められません。
逆に,他人のものだと知っていた場合でも,平穏かつ公然に,自分のものとして占有を開始した場合は,20年占有を継続すれば時効取得を主張できます。
(自分のものであると過失なく信じていた場合は10年で時効取得できます。)
「自分のものとして」占有していたことが認められる要素として,長年耕作していた事実や,固定資産税を占有者が納めていた事実がよく挙げられます。
回答者 弁護士 仲家 淳彦
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