不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和3年4月号》
不動産鑑定士が求める価格の位置づけ

1. はじめに
 不動産鑑定士による鑑定評価額は、実勢価格とどういう関係にあるのですかという質問を時々頂きます。そこで、今回は、鑑定評価額は実勢価格と比較して高いのか安いのか、又はそもそも関連性が有るのか等を整理したいと思います。また、限定価格と呼ばれる価格も紹介します。

2.鑑定評価額
 不動産鑑定士が求める価格は、原則として正常価格です。正常価格とは、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」(鑑定評価基準 総論 第5章)のことをいいます。
 具体的には、正常価格は、売り手にも買い手にも偏らない客観的な価格のことであり、不動産を割安で処分するような価格は該当しません。

3.実勢価格との関連性
 実勢価格は、実際の市場で取引されている価格のことですが、場合によっては売り出し価格、買い希望価格等も含まれます。不動産を売買する場合、売り主と買い主は、様々な事情を背景に取引を行いますので、取引価格にはバラツキが見られます。
 一方、鑑定評価額は、実勢価格を踏まえて査定するため、実勢価格の範囲の中で、市場価値を表示する適正な価格(正常価格)として求めます。なお、鑑定評価額は、「○○円〜○○円」というような幅で求めることは認められていないため、ピンポイントで○○円と求めることになります。


鑑定評価額と実勢価格

4.限定価格
 不動産鑑定士は原則として正常価格を求めますので、実勢価格を超えるような又は下回るような価格を求めることは出来ません。
 しかしながら、例外的に、実勢価格を超える価格として限定価格を求める場合があります。
 限定価格とは、特定の当事者にとって経済合理性が成り立つ価格で、隣接地を併合する場合等の価格です。例えば、以下の図のような、建物の建築不可となっているような無道路地を隣接地と併合することにより、無道路地の状態が解消され、建物の建築が可能となる場合が該当します。この場合、無道路地の所有者は、実勢価格を超える水準で隣接地を取得しても、十分ペイすることになります。


限定価格

5.最後に
 今月は鑑定評価額と実勢価格の関連性、正常価格と限定価格の違いを整理しましたが、次回は鑑定評価を依頼する場合の注意点を説明したいと思います。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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