1.はじめに
新規賃料の鑑定評価の手法には、「積算法」、「賃貸事例比較法」、「収益分析法」などがありますが、今回は、「積算法」を説明します。
2.積算法の目的
積算法とは、大ざっぱに言うと投資費用の回収額を試算する手法で、オーナー目線の賃料を求めるものです。
具体的な計算方法は、以下の通りです。
3.基礎価格とは
基礎価格とは、価格時点の不動産価格のことですが、家賃を求める場合と地代を求める場合で計算方法が少し異なります。
(1)家賃の基礎価格
家賃を求める場合の基礎価格は、現状の利用を前提とした不動産価格であり、テナント資産の設備などは基礎価格に含まれないことに注意が必要です。
(2)地代の基礎価格
更地の最有効使用が制限されている場合は、制限の程度に応じた土地価格が基礎価格になります。例えば、建築基準法上は中高層ビルの建築が可能であるにもかかわらず、契約上、2階建以下しか建築出来ない場合は、その制約に応じた土地価格を基礎価格として採用します。
4.必要諸経費等
必要諸経費等は、不動産を維持・運営する費用のことで、@減価償却費(計上しない場合もあります)、A維持管理費、B公租公課、C損害保険料、D貸倒れ準備費、E空室等による損失相当額から構成されます。
5.期待利回り
期待利回りとは、対象不動産に期待される利回りのことで、収益還元法における還元利回りを求める方法に準じて求めます。
6.積算法は使えるのか?
不動産屋さんで部屋を借りる場合、賃貸マンションの価格を一旦求めて、次に利回りを掛けて、家賃を計算するような方はいないと思います。おそらく、周辺の相場と比較して表示されている家賃が妥当かどうかを検討するのが通常です。
従って、住宅の家賃等は、周辺相場に基づいて判断されるため、積算法は使えない手法なのではないかという疑問が出てきます。
しかしながら、賃料相場が形成されていない特殊な不動産の場合は、積算法は有用とされています。例えば、オーダーメイドで建築された店舗・ホテル、体育館などの公共施設などは賃料相場が形成されておらず、積算法を参考にせざるを得ません。
7.最後に
次回も新規賃料の評価手法について説明します。
回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
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