不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和7年6月号》
継続賃料27

1.はじめに
 今回は、直近合意時点の設定について説明します。

2.直近合意時点は明記しなければならない
 直近合意時点をいつ時点に設定するかは、鑑定評価額(継続賃料)に与える影響が大きいため、鑑定評価書の必要的記載事項として必ず記載しなければならないとされています(鑑定評価基準第9章第2節Z7.)。
記載例としては以下のようになります。
【記載例】
・直近合意時点
 平成〇〇年〇月〇日
 平成〇〇年〇月〇日付の賃料改定に係る覚書により、上記の時点が現行賃料を現実に合意して適用した時点である。


直近合意時点

3.賃料の合意時点と使用開始時点が異なる場合
 直近合意時点は、「契約当事者間で現行賃料を合意し適用した時点」とされています。しかし、賃料の合意時点において、土地・建物の引渡しが出来ていない場合には、直近合意時点が問題となります。
 これについては、不動産鑑定士協会が作成している「不動産鑑定評価基準に関する実務指針〜平成26年不動産鑑定評価基準改正部分について〜」で具体的な判例を取り上げて、使用収益開始時点を直近合意時点とすることが妥当としています。
 理由としては、使用収益の開始前は、借地借家法に基づく賃料増減額請求が出来ないためとしています。

4.最後に
 次回も継続賃料を説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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