不動産鑑定士の仕事

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福岡!企業!元気!のための法律ワンポイント 《令和8年1月号》
継続賃料35

1.はじめに
 建築工事費を始めとする諸物価の上昇により賃料上昇が顕在化し、都心部では継続賃料を争う事案が急増しています。今回は、継続賃料の鑑定評価を依頼する場合、どのような不動産鑑定士を選択すべきかを解説します。

2.継続賃料の鑑定は難易度が高い
 継続賃料の鑑定評価は、不動産鑑定士にとっても難易度が高い分野です。
 なぜなら、継続賃料評価は、差額配分法、利回り法、スライド法などの複数の鑑定評価の手法(計算方法)を適用することが求められています。また、各手法を適用する前提として、現在の適正な相場(正常賃料)を積算法、賃貸事例比較法、収益分析法等を適用して求める必要があります。さらに、現在の土地・建物価格だけなく、過去の土地・建物価格も求めます。このように、複数の賃料や価格が査定されるため、一貫性のあるロジックで鑑定評価書を作ることが難しくなります。一貫性が無い鑑定評価書の場合、相反する立場の賃貸人又は賃借人サイドから、鑑定評価書の論理の矛盾を突かれることになり、信頼性の乏しい鑑定評価書と指摘されることになります。

3.評価対象が事業用不動産
 継続賃料が争いとなる場合、月額10万円程度の住宅の家賃ではなく、月額数十万円から数百万円の事業用不動産の家賃が争われる場合が大半です。
 事業用不動産とは、店舗、事務所、ホテル、倉庫、老人ホーム等の不動産です。各用途には、個別の賃貸市場が形成されているため、専門性が求められます。住宅の家賃であれば、不動産屋さんに行けば直ぐ分かりますが、事業用不動産の適正な家賃は不動産鑑定士にとっても難しいものです。例えば、オフィスビルの適正な賃料を把握する場合、オフィスマーケットの分析やオフィスビルの経営内容を把握する必要があります。また、ホテルの賃料評価を行う場合、ホテルのカテゴリーに応じた宿泊単価の相場、稼働率、経営内容(GOPなど)を把握しなければなりません。

4.どのような不動産鑑定士を選択すべきか
 継続賃料の鑑定評価は、前記の2.と3.を行う能力が有る不動産鑑定士に依頼すべきということになります。しかしながら、一般の方が不動産鑑定士の能力を判断するのは困難なのが実情だと思います。
 最も確実な選択は、鑑定業界のビッグ3と言われる全国大手三社の中から選ぶことです。なぜなら、全国大手三社は、不動産証券化業務を通じてレベルの高い事業用不動産の評価ノウハウを作っています。また、組織的な鑑定を行っているため、論理に一貫性が有る鑑定評価書を作成する訓練を受けています。しかしながら、鑑定報酬が高いため、支払ったコストに対するリターンが得られるかどうかは不透明です。
 次善の選択としては、全国大手三社に長年在籍した不動産鑑定士の中から選ぶことです。この場合、大手事務所よりはリーズナブルな鑑定報酬で、品質の高い鑑定評価書を作成してもらえることがメリットになります。したがって、継続賃料の鑑定評価を依頼する場合、不動産鑑定士の経歴を確認することが最も重要と考えます。

5.最後に
 次回も継続賃料を説明します。

回答者 不動産鑑定士 佐々木 哲
佐々木不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 佐々木 哲
〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-6-20 ラクレイス薬院203
TEL092-791-1873 FAX092-791-1893
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