今月と来月2回に分けて、年金についてまちがった理解をされているケースの『ベスト5』をご紹介します。
ベスト5とは、年金相談を年1500件ほど受けている私の独断と偏見で、決めさせてもらったものなので、順位はあまり気にされないようお願いします。
その1.「年金は60歳からもらうより65歳からもらうほうが年金額が多いので得だ。」
<答え>
厚生年金に加入したことがある人だったら×バツです。国民年金のみに加入している自営業者や農業を営んでいる人でしたら〇マルです。
国民年金と厚生年金を混同している方がたくさんいます。国民年金のみに加入している人は年金がもらえるのはもともと65歳です。それを60歳まで前倒しして早く受給することができます。その代り早くもらったら1月につき0.5%ずつ減額されます。60歳でもらったら70%の受給率となります。
25年の資格があり、1年以上厚生年金に加入していれば、現在は女性であれば60歳、男性であれば61歳から厚生年金の一部がもらえます(実際は生年月日で受給開始年齢が違います)。厚生年金と国民年金合わせて25年になる人がほとんどなので、もともと60歳や61歳から厚生年金の一部の報酬比例部分がもらえるのです。手続きをせず、もらわなくても増えることはありません。仮に65歳で手続きを行ったとすると、本来60歳でもらわなかった厚生年金部分が5年分まとめてもらえるだけです。決して手続きを遅らせたら増えるということはありませんので、自分の年金の受給権(年金を受け取る権利です)が発生したら確定させておかれるのがお勧めです。
その2.妻が年金の手続きをすると夫の年金が減る!
<答え>
そんなことは決してありません。まったくの誤解です。そう思われる根拠を説明します。
例えば夫が会社員(厚生年金加入)20年と国民年金10年とします。夫より5歳年下の妻は結婚前のお勤め(厚生年金加入)5年と国民年金20年とします。その夫が65歳になると厚生年金に加給年金という配偶者手当がつきます。現在年間389,200円なのでかなり多額です。ただし、これは有期年金で、もらえるのは配偶者が65歳になるまでなので、この夫婦の場合、もらえるのは5年間です。一方妻は、60歳から5年分の厚生年金の一部が受給でき、65歳になると25年分の老齢基礎年金が出てきます。この時の老齢基礎年金に振替加算という加算がつきます。金額は妻の生年月日により違います。これはあなたの生年月日だと満額(40年)の老齢基礎年金がもらえないので、足りない分の穴埋めをしますよという加算なのです。(ただし、いくつかの条件があります。)
このことから、妻が65歳で手続きをしたら、夫の年金が減り、妻の年金が増えると勘違いをされているわけです。手続き云々ではなく、加給年金と振替加算という条件を満たしたら加算される、条件を満たさなくなれば消滅するというものが、もともと年金の中にあるのです。
その3、働いていたら年金がもらえない?
<答え>
報酬比例の年金をもらえるようになった後、厚生年金に加入して働いた場合、給料がある程度高い場合は、確かに年金がもらえない人がいます。しかし、一般の人が「働く」という意味と年金が止まる場合の「働く」は少し内容が違います。あくまで、報酬比例の年金がもらえるようになってから、厚生年金に加入して働く場合に、支給制限がかかるわけです。厚生年金に加入せず働いた場合は、関係ありません。たとえば、個人の自営業者、農業従事者、週20時間以上30時間未満で雇用保険のみに加入して働く人などです。ですから、いくら給料が高くても年金が減らされることはありません。また、女性は過去の給料が男性の6〜7割だったので、年金も男性よりかなり低いです。こんなことから、女性が60歳以降厚生年金に加入して働いても、減額になる方はほんの一部です。一律に働いていたら、年金がもらえないわけではありませんので、ご注意ください。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
|