秋も深まり、日が暮れるのも随分早くなってきました。
今月号は、受給資格について、最近出会っためずらしい事例をご紹介します。
年金をもらうには、国民年金・厚生年金・共済年金どの制度を合わせてもいいのですが、原則25年必要です。ですから、現在の制度では少なくとも、35歳までにまったく支払っていなければ、その後60歳まで25年間ずっと払わないと年金はもらえません。(60歳からの任意加入は別と考えます)生年月日や職種によって例外はありますが、今回紹介するのは、56歳まで年金保険料を1月も払ったことがなかった女性が71歳で初めて年金が受け取れるようになった例です。
A子さんは非常に裕福な家庭に生まれ、花嫁修業後医師に嫁ぎました。結婚生活も幸せで金銭的に何不自由のない生活でしたので、年金をあてにするような生活になるとは全く思わず、支払っていなかったそうです。ところが、個人病院経営のご主人が50代半ばで突然死去。A子さんの生活が180度変わりました。生活の為、親戚の病院の事務職として働き始め、生まれて初めて厚生年金に加入しました。この時56歳です。
60歳を過ぎてから旧社会保険事務所に2〜3度足を運んだそうですが、けんもほろろにあなたは年金もらえませんと言われたそうです。(25年の資格にまったく届きませんのでそう言われてもやむを得ないと思います)
そうこうしながらも生活の為、引き続き親戚の病院で69歳まで働き続け、ある日目にした新聞に「厚生年金の高齢任意加入」の記事が載っていたそうです。
厚生年金の制度があるのは70歳までですが、事業主が承諾し、年金事務所に届出をすれば、年金の権利ができるまで加入し続けることができる制度です。
そして、もう一つ、昭和22年4月1日以前生まれの女性であれば35歳以降15年加入(生年月日によっては16年から19年)の厚生年金の資格があれば、25年の資格があるとみなす特例にA子さんは該当したのです。
ですから、69歳からあと2年間働けば、もしかしたら年金がもらえるということで、A子さんは年金事務所と親戚の病院に相談し、70歳以降も厚生年金保険料を納め続けました。
そして、めでたく71歳にして初めて年金の受給資格を手に入れたのです。受給金額も月5万円には少し届きませんでしたが、A子さんの予想金額よりは大きく上回ったようで、満面の笑みで帰途につかれました。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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