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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成27年5月号》
ねんきん事例1(未届けの妻のケース)

 昨年はその時々に思いついた題材から年金に関する話題を提供していたのですが、27年度は事例紹介で進めさせていただきます。ただ、個人情報に関することなので多少修正を入れています。ご了解のほどお願いします。

 相談者:A介さん(66歳)会社員
 妻:B子さん(43歳)専業主婦 18歳、15歳、12歳の3人の子供あり

 「実は年金の手続きを早くした方がいいよと会社から言われましたが、事情がありましてどうしたらいいかと思いまして・・・」
 その事情とはこういうことでした。
 若いとき結婚して子供も2人生まれたが、法律上の妻と性格が合わず、A介さんが家を出てしまった。もう20年以上たち、現在では音信不通状態。過去何回かは離婚の申し出をしたが、奥さんが聞く耳を持たなかった。A介さんも福岡で新たに所帯を持ち平穏に暮らし始めたこともあり、ずるずると今日まで来てしまったのだそうです。
 昨年はその時々に思いついた題材から年金に関する話題を提供していたのですが、27年度は事例紹介で進めさせていただきます。ただ、個人情報に関することなので多少修正を入れています。ご了解のほどお願いします。

 詳しくお話を聞きましたら、次の問題点もわかりました。
● 年金の権利発生は60歳なのですが、手続きをされていないので時効の問題もあり早くした方がいいこと。
● 年金の中に配偶者手当である加給年金と振替加算というものがあるのですが、果たして戸籍上の妻に加算されるのかまたは事実上の妻に加算されるのか調べてみる余地があること。
● A介さんはまだ現役会社員なのですが、将来の遺族厚生年金もどちらに権利があるのか、非常に大きな問題であること。
● 実はB子さん、独身の時1年ほど働いたことがありますが、退職後1月も国民年金を払っていないため、基礎年金番号もない状態となっている事。(このままでは将来無年金の可能性も大)
● 会社から、お子さん達は認知されているからA介さんの健康保険の扶養者となれるが、B子さんは籍が入っていないから被扶養配偶者となれないと言われ、B子さんだけこの20年間国民健康保険に加入していたこと。

 アドバイスした点は次のようなことです。
● 一番大事なことは、遺族厚生年金請求の際必ずトラブルになりますので、弁護士さんに間に入ってもらい、戸籍の問題を少しでも早くすっきりさせた方がいいこと。B子さんは自分の年金がない状態なので、遺族厚生年金の受給権の有無は死活問題です。
● 加給年金・振替加算については、戸籍上の妻には加算されないことがわかりました。A介さんが出て行った後、厚生年金に加入して30年ほど働いて子供さんを育てたようです。厚生年金加入期間が20年以上の夫婦だと加給年金は加算されません。B子さんが事実上の妻だと認定されたら、加給年金・振替加算の権利はB子さんにはあります。

● B子さんの基礎年金番号に関しては、昔の厚生年金番号を基礎年金番号としてもらい、年金手帳の再発行をしてもらいました。ただ国民年金保険料の支払いをどうするかという問題もあります。現在は住民票上の住所は同じですが世帯が別々です。B子さんの所得は0円なので、免除申請が認められます。住民票を一緒にして未届けの妻になれば(健康保険の被扶養配偶者となる)A介さんに高額の所得がありますので、免除申請が認められません。
 A介さんに年金の権利があり、65歳を過ぎているのでB子さんは3号被保険者にもなれないのです。
 将来の年金の金額を考えると、支払ったほうがいいと思うのですが・・・
● 健康保険は、会社が言っていることは誤りで、社会保険法上は実態を重んじるので籍が入っていなくても一定の書類が整えば被扶養配偶者になれます。

 以上のような説明を行い、老齢厚生年金の請求手続きを済ませました。他のことは良く考えていただき、何かお手伝いができることがあれば言ってくださいということで終了しました。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
福岡市早良区西新4-7-10西川ビル304
TEL092-836-8238 FAX092-836-8239
HP http://hreiko-office.com/
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