3月号で国民年金保険料を納付しない理由で一番多いのが「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」、その次に多いのが「年金制度の将来が不安・信用できない」というのをご紹介しました。
平成28年1月26日に厚生労働省が「国民の皆様の声」に寄せられた質問に対する回答を発表しましたので、記載します。
記の年金額の発表と同時に厚生労働省年金局から平成26年国民年金被保険者実態調査結果の概要も出ました。興味深い項目・数字をご紹介します。
(国民の声)
年金の義務化をどうかかえてください。毎月高い年金を払って将来貰えるかわからない。だったら自分で貯金をしていた方がいいです。
(国の回答)
現在の年金制度は、現役世代の方が納める保険料を高齢者などの年金の給付に充てるという世代と世代の支え合いの考え方を基本としています。また、保険料収入以外にも、積立金や国庫負担が年金の給付に充てられています。
したがって、今保険料を納めている方々が年金を受給される際の給付の原資は、その時の現役世代の納める保険料や積立金、国庫負担となります。少子高齢化の進む中で、長期的には給付水準はゆるやかに低下していく見通しですが、我が国において経済活動が営まれている限り、将来の保険料収入や税収入がなくなることはありませんので、年金が受け取れなくなることはありません。
もし公的年金制度がなかったら、私たちは、親の老後を仕送りなどで支えたり、自分自身の老後に自分だけで備えたりする必要がありますが、自分が何歳まで生きられるのか、長い人生の間に、経済の状況や社会の在り方がどう変化していくのかは予測できません。途中で重い障害を負ったり、一家の大黒柱が亡くなってしまうこともありえます。個人や家族だけで対応しようとしても、必要な額の貯蓄ができなかったり、貯蓄の為に必要以上に生活を切り詰めたり、家族や子供に頼ることができなくなったりすることも起こりえます。これらに対しては、社会全体で対応したほうが確実で効率的であり、世代を超えて支え合うことで、その時々の経済や社会の状況に応じた給付を実現することができます。
このように、公的年金制度は、予測することができない将来のリスクに対して、社会全体であらかじめ備え、生涯を通じた保障を実現するために必要なものですので、ご理解をいただければと思います。
"長期的に年金制度を維持するために国民に理解を求める"という前提条件がある為にこういった回答にならざるを得ないだろうとは思います。
私たち一人ひとりが自分と家族の将来を考えるに当たり、基本は公的年金制度で、公的年金制度で賄えないところは私的年金制度を組み合わせて人生設計を考えるということが大切です。
実際これまで公的年金のプラスの事例として25年間全額免除を続けたシングルマザーの女性、支払った保険料は1円もありませんが、老齢基礎年金が月13,000円ほど受け取れるようになり、まさか自分が年金をもらえるとは思わなかった、孫に小遣いが渡せると非常に喜んでいた方がいました。
一方で50歳台後半の会社員の男性の場合、これまでに支払った厚生年金保険料が総額で1000万円以上です。数年前に離婚し、お子さん二人を引き取り成人させました。ガンで亡くなりましたが、遺族が受け取れる年金は何もありません。お姉さんが死亡の手続きに来られ、「何もないだろうとはうすうす感じていました。助け合いの制度なので、弟が払った保険料はよその家庭の遺族年金になるのですね」とおっしゃっていました。
長い人生の中で、個人がおかれた立場によって年金制度とのかかわりが違ってきますので、いい制度だと思う人もいれば、なんという理不尽な制度なんだと怒りを覚える人もいるのでしょう。
ただ、日々年金を通して人様の人生の一コマに関わるわけですが、やはり公的年金はとても大事なもので、若いときから自分がどう生きていくのかを考えるのは重要なことだと実感することがよくあります。
60歳前後まで未納を続けていた方が(若いときは年金制度なんかに頼るつもりはない!と思っていた)いざ周りが年金を受け取れるようになると何とかならないかと相談に来られます。
又自分で貯金するからいいわとおっしゃる方もいます。月の生活費が仮に15万円だとして65歳から85歳まで生きたら3600万円必要です。はたして貯められるでしょうか?かなり無理な数字ではないでしょうか。でも老齢基礎年金が満額だったら780,100円×20年で15,602,000円です。残りの20,398,000円をためればいいので、実現可能性はかなり上昇します。
いくつまで生きたとしても例えば月に3万円の年金があるという裏付けと(もちろん小遣いにしかならない金額ですが)全く年金がないのとでは、気持ちの面で大きな開きがあると思うのは私だけでしょうか。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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