今月と来月は遺族年金についてお話しします。
遺族年金とは、もしもの時残された遺族の安定した生活を維持するものです。
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。一定期間保険料を支払っていることも必要です。自営業者等が国民年金加入中に死亡し、高校卒業前の子がいる妻や子のみが残された場合、遺族基礎年金が受給できます。
会社員や公務員が在職中に死亡したら、遺族厚生年金(遺族共済年金)となります。高校卒業前の子がいる場合は、遺族基礎年金も一緒に受給できますので、会社員や公務員のほうが自営業者よりも手厚い保障を受けることができます。また、すでに老齢厚生年金を受け取っている受給者が死亡した場合も、配偶者は遺族厚生年金を受け取ることができます。遺族厚生年金の金額の考え方は、基本的に老齢厚生年金と同じで、亡くなった方の給料が高ければ高いほど受給金額が高くなります。
これまでの経験で、少額のケースとして民間会社で4か月勤務した後、実家の農家の後継ぎになった男性の場合、妻がもらう遺族厚生年金は月1,000円にも満たないものでした。最高額としては船員の妻で月25万円も受け取っていました。
さて次に遺族の範囲と順位が決まっていますので、ご説明します。
第1順位 子がいる配偶者又は子のみ(夫の場合は死亡時55歳以上、支給開始は60歳)
第2順位 子がいない妻、又は55歳以上の夫
第3順位 父母(死亡時55歳以上、支給開始60歳)
第4順位 孫
第5順位 祖父母(死亡時55歳以上、支給開始60歳)
この遺族の範囲に関して様々なケースを見ていきましょう。(納付条件は満たしているとします)
@ 40歳の会社員である妻が死亡。残されたのは45歳の会社員の夫と13歳の子供一人
⇒遺族基礎年金と遺族厚生年金を夫が受給します。13歳の子供は父親から養育されますので支給停止となります。夫は45歳ですが、遺族基礎年金が受け取れる場合は遺族厚生年金も一緒に受け取れます。
A 夫62歳。これまでずっと自営業者で国民年金に加入していましたが、売り上げ不振で廃業。60歳から会社勤めを始めました。働き始めて2年目に死亡。残されたのは52歳の妻のみ。子供はいません。
⇒子供がいないので遺族基礎年金はありませんが、遺族厚生年金が受給できます。勤務年数は2年と短いのですが、在職中の死亡なので25年間加入したものとして支払われます。
B 夫58歳で老齢厚生年金をもらう前に死亡しました。夫は再婚で前妻との間に15歳の女の子がいて、再婚した妻が育てていました。この妻と養子縁組はしていませんが、この女の子の面倒はこれから先も再婚した妻が見ます。
⇒養子縁組をしていなくても、一緒に生活して養育すれば、この妻に遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されます。ですからこの夫の子である15歳の女の子の遺族基礎年金と遺族厚生年金は、支給停止となります。
C 老齢厚生年金を受け取っている62歳の夫が死亡しました。バツ1同士の再婚で、再婚した妻には子供がいませんが、夫には前妻との間に15歳の男の子がいます。その子は前妻が育てています。夫はその子に毎月生活費を送っていました。
⇒再婚した妻には遺族厚生年金の権利はあるのですが、受け取ることができません。15歳の男の子には遺族基礎年金と遺族厚生年金の権利が発生します。ただ、母親と生計同一(前妻が養育している)なので、遺族基礎年金は支給停止となります。子のある妻と子は同一順位なのですが、このケースでは再婚した妻は子のない妻になるので、子の方が上の順位になり15歳の男の子が遺族厚生年金を受給することになるのです。
いかがでしたか? 誰が受け取れるのか判断に迷いますね。
遺族年金を受け取らなければ生活が困難な遺族はだれかという視点で考えると少しは理解がしやすくなるかもしれません。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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