今回は年金の常識とまでは言えませんが、結婚生活の中で様々な理由により気持ちの擦れ違いが生じ、離婚という選択をされるご夫婦も増えていますので、離婚時の年金分割制度を取り上げます。今月号はしくみや手続きについて、来月号は事例を取り上げます。
離婚分割の制度を、夫が受け取っている年金の半分がもらえる制度と理解している女性が多いようです。
実際は、婚姻期間中の二人の厚生年金の保険料納付記録を分ける制度で、多い方から少ない方へ厚生年金の期間が移る制度です。結果的に、すでに年金を受け取っている女性が離婚分割を請求すれば、請求月の翌月分から受け取れる厚生年金の額が増えることになります。ちなみにすでに分割請求をした年金受給者の女性が受け取っている金額は月3万円程度だそうです。
分ける割合は、多くの場合5割です。でも、妻の方に借金や浮気をした等の責任がある場合には割合が下がることもあります。分割割合の話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に審判の申し立てができ、最終的に按分割合が決められます。
離婚をする夫婦は二人で按分割合を決め、年金事務所に分割請求の手続きをします。身分証明書、印鑑、離婚後の戸籍謄本、妻の住民票等が必要です。審査終了後に「標準報酬改定通知書」というものが郵送されます。
離婚後2年を過ぎたら原則請求できませんので、注意が必要です。
分割した後の効果について説明します。
@ 分けることができるのは厚生年金部分ですから、65歳から受け取れる老齢基礎年金は関係ありません。何故なら妻も原則自分の老齢基礎年金が受け取れるからです。
A いつから受け取れるかというと、その女性の受給開始年齢からです。たとえば、昭和35年4月2日生まれの女性は、厚生年金がもらえる年齢は63歳からとなっています。今離婚をして厚生年金の記録をもらっても、63歳にならないと受け取れません。
B 元配偶者が死亡しても、もらった厚生年金の記録に何ら影響はありません。
C 夫から厚生年金の記録をもらった後、元妻が死亡しても生計維持関係のある18歳年度末までの子がいれば、その期間を含めて遺族厚生年金が支給されます。
D 老齢厚生年金だけでなく、障害厚生年金を受給中であっても分割されます。
情報提供の請求
離婚をする前に、按分割合を決めるための必要な情報を得ておきたい人は、「情報提供の請求」を行うことができます。この手続きは一人でも(妻からだけでも)できて、希望すればその結果は相手方に通知されません。
以下の内容が載ったものがきます。
@ 分割の対象期間
A 対象期間の中で支払った厚生年金の保険料
B 按分割合の範囲
C 年金見込額(50歳以上)
この手続きに必要な書類は、身分証明書、印鑑、戸籍謄本です。
次回は、私が経験した事例についてお話します。
回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
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