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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成28年12月号》
年金の常識K

 先月号に引き続き加給年金の過払い事例の紹介をします。
過払いとは、年金を払いすぎているので、その分を返してくださいということなのですが、一般の方にとって、複雑な年金制度の理解は困難ですし、どうしてという怒りでいっぱいだと思います。

 この騒動に巻き込まれたのは元公務員の男性Sさん。昭和14年生まれの77歳です。
昭和14年生まれの公務員は、60歳過ぎの年度末で定年退職をしたら、4月から共済年金を全額受け取ることができました。13歳年下の妻のB子さんもいますので、配偶者手当に相当する加給年金(現在は年額390,100円ですが、Sさんの場合は年額257,700円です)も加算され、月に20万円以上受け取っていました。
現在64歳になるB子さんは、30年間厚生年金に加入して働いた人です。60歳からは、厚生年金の一部である報酬比例の年金を月に5万円ほどもらっていましたので、裕福とまではいかなくとも2人の年金で日々の暮らしが成りたっていました。

今年の夏に突然共済組合から「加給年金を払いすぎていたので返還してください」という手紙が届きました。Sさんにとって寝耳に水の話です。
平成27年10月に被用者年金一元化(共済年金が厚生年金といっしょになった)となったことにより、日本年金機構が持っているB子さんの厚生年金の記録が共済組合で把握できるようになりました。B子さんは厚生年金に20年以上加入しているので、60歳になった時にSさんから届出をしてもらい、共済組合は加給年金を止めないといけなかったわけです。そんな複雑なことを知る由もないSさんはもらい続けました。そのもらいすぎた年金額が約100万円なのです。
ここで共済組合とSさんの言い分を整理してみます。
【共済組合】
@ 年金を支給し始めた時に、共済年金の証書と一緒に「受給者のしおり」を郵送している。その中に異動届を提出するよう記載している。
A 共済年金の法律にもとづいておこなう適正かつ公正な事務処理なので、個別の事情等考慮できない。
B 共済組合と日本年金機構のシステムが相違しているので、配偶者の状況が把握できるようになっていなかったので、払いすぎたのは致し方ないことである。

【Sさん】
@ 年金の受給開始時から加給年金が加算されているので、当然ずっともらえるものだと思っていた。配偶者が20年以上の厚生年金をもらったら、加給年金がもらえなくなるとの説明は、共済組合から一切聞いていない。
A 「受給者のしおり」に記載してあると言っても、そもそも専門家しかわからないような複雑な仕組みである。これを一方的に届出をしなかったこちらの落ち度だと言われても到底納得できない。
B 共済組合と日本年金機構のシステムが違うからという理由は、責任を弱者である一般庶民に転嫁していることではないか。
C 100万円という大金をこれからもらう年金から差し引かれたら、今後の生活が立ち行かなくなる。

上記のようなお互いの主張で、Sさんは裁判も辞さないという強気の発言でした。その後Sさんがこの問題をどう処理されたのか聞いていませんが、Sさんにとって大変お気の毒な災難でした。 

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等 堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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