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福岡!企業!元気!のための年金ワンポイント 《平成30年2月号》
障害年金事例@

 今月号は「てんかん」を取り上げます。
 てんかんという病名そのものの認知度は高いと思います。しかし、病気に対する正確な情報が伝わっているとはいえず、服薬せず起こった自動車事故等による負の情報が印象に残っていることが多いのではないでしょうか?
 これまで数度てんかん発作の持病がある若者の障害年金申請の相談を受けました。
 その内の一人は比較的軽度なので、障害認定基準を満たさないのではないかというものでしたが、30歳代前半の彼の10回以上の転職履歴を目の当たりにすると、てんかんを抱えた方の就労状況の厳しさに心が痛みました。
 自分の都合で転職したわけではなく、職場で発作が起こり首になったケースがほとんどでした。妻子がいるため働かざるを得ず、持病にてんかんがあることを面接時に伝えて採用されるものの、いざ発作が起こると首になる。持病を隠して就職しても発作が起これば首になるので、このような生活が不続くと極めて不安定、何とか所得補償としての障害年金をというものでした。
 もう1件は、申請に当たり発作状態の記録を詳しく聞き取り参考資料として付け、薬がなかなか効かない難治性のてんかんだった為障害基礎年金2級が認められました。将来を支える若者が一人でも多く障害を持ちながらなんとか働ける状態になれたらと考えています。

 さて、日本てんかん協会のHPから抜粋した情報を確認したいと思います。
 【定義】
 大脳の神経細胞は規則正しいリズムでお互いに調和を保ちながら電気的に活動しています。この穏やかなリズムを持った活動が突然崩れて、激しい電気的な乱れが生じることによって起きるのが、てんかん発作です。このためてんかん発作を「脳の電気的嵐」とも言うそうです。また、この発作は繰り返し起こり、1回だけの発作では診断しないということです。

 【原因】
 (症候性てんかん)脳に何らかの障害や傷があることによって起こるてんかん
 例)脳炎、髄膜炎、脳出血、脳梗塞、交通事故等による脳外傷
 (特発性てんかん)様々な検査をしても異常が見つからない原因不明のてんかん

 【発症率】
 100人に1人で全国に100万人います。ただ、現在の医療で適切な治療をしたら70〜80%の人がコントロール可能であり、普通の社会生活を営んでいます。しかし、2割の人は薬を飲んでも発作をコントロールできない状態で、「難治性てんかん」と呼ばれるものもあります。

 【障害年金との関係】
 てんかんで障害年金を受給することは、現在の日本年金機構の認定基準と使用する診断書では簡単なことではありません。
 難しい理由の一つが、『てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない』となっていることです。
 二つ目が、てんかんで障害年金を申請する場合、精神の診断書を使用しますが、現在の診断書にてんかんの障害状態を正確に表すことが非常に難しいことがあげられます。
 日本年金機構が公表している認定基準で、てんかん発作のタイプを4種類に分けています。
 A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
 B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
 C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
 D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作
 「てんかんの認定に当たっては、その発作の重症度(意識障害の有無、生命の危険性や社会生活での危険性の有無など)や発作頻度に加え、発作間欠期の精神神経症状や認知障害の結果、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、社会的活動能力の損減を重視した観点から認定する。」となっています。
 加えて日常生活能力の判定をされるのですが、てんかんを抱えた方は発作がないときは、食事や清潔保持、買い物等何ら支障がないのですから、すべて「できる」という判定になるわけです。発作中は意識がない等の理由により、極端な話「助言や指導をしてもできないもしくは行わない」という判定にならざるを得ないわけです。この両極端な状態を認定する審査官や認定医に正しく伝えられるかが受給権獲得の分かれ目になる場合が多いのです。

回答者 特定社会保険労務士 堀江 玲子
老齢・遺族・障害年金・脱退一時金・労災・加入記録の調査、手続き等
堀江社会保険労務士事務所
特定社会保険労務士 堀江 玲子
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